過去ログ - 【艦これ】五十鈴の調子が悪いようです【SS】
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24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 21:29:31.50 ID:foU1KJOC0
 再び赤城がつがえた矢を見れば、その先端には妖精が必死の形相でしがみついているのが分かった。
 そして再び音速を超える一矢を放てば、それは空中で見る間に形を変え、九六式艦戦の姿となるのだ。無論、操縦席に座るのはしがみついていた妖精である。
 これが本来の正規空母型艦娘による発進シークエンスであり、文月を救った時の簡易なものとは次元が違うものと分かる。
 放たれた矢――艦載機――は合計で二本。うち一本は、例のピアイルック家へ向けられたものだが、一本は春島内地へ向けられていた。
「――何か進展があったのですか?」
 音もなく赤城の背後に立ちながら、加賀がそう問いかけた。このトラック泊地において、そのような芸当ができるのは彼女を置いて他にいないだろう。
「ピアイルック家の方で動きがありました。当主らしき男が春島へ来ています」
 これは、見張りについていた妖精二人のうち、一人が後を尾けて得た情報である。
 ――空母型の艦娘とその妖精は、距離を隔てていても意思の疎通を可能としている。
 深海棲艦との戦闘においては偵察などで威力を発揮する能力であるが、やりようによってはこのように、密偵としても働かせられるのである。
「では……?」
「ええ、今のは援軍です。これでピアイルック家の方へ二人、当主の方へ二人ついているわけですから、まず間違いはないでしょう」
 これは尾行や見張りにおいて当然の心得である。もしも、ピアイルック家の見張りにつけていた妖精が一人きりであったならば、当主の尾行をする間にそちらが手薄となってしまっていただろう。
 このような任務においては、とにかく複数で行動させ、密な連携を取っていくことが重要となるのである。
 ――が、この場合においてはひとつ問題が存在した。
「……また、ボーキサイトを消費してしまいますね」
「……提督には、後で謝っておきましょう」
 このように、かくも便利な空母型艦娘の艦載機運用能力であるが、当然、無償でこれだけの力を得られるわけではない。
 艦載機を操る妖精たちは、ひとつ行動を終えるたび、多量のボーキサイトをねだってくるのである。
 この戦時下において、限りなく私的な理由で軍事物資を消費するわけであるから、それを誤魔化す司令の苦労は語るまでもないだろう。



 元来、トラック諸島を有するミクロネシア連邦は小規模な農業と水産業を中心とした地産地消の気風が高い国であり、貨幣取引を用いた経済活動に対しては、乗り気ではない……とまで言わずとも、積極的なものではなかった。
 そんな中、皮肉にも彼らの方針を変えたのは他ならぬ深海棲艦の出現であった。
 深海棲艦の脅威に対するため、この地へ我が国を中心とした防衛部隊が配備されたことはすでに語ったが、そうなると、否が応でも駐留兵を始めとする外国人と現地人の間で、物の行き来が発生することとなる。
 代表的なところでは水がそうだが、どうしても現地で調達せねばならない品々は多いし、現地人にとっても、深海棲艦の影響による魚場の縮小を補うだけの収益が必要不可欠だったのである。
「その結果生まれたのが、この賑わいというわけです」
「はあ……勉強になります」


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