過去ログ - 【艦これ】五十鈴の調子が悪いようです【SS】
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23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 21:29:01.34 ID:foU1KJOC0
「こうと決めたからには、意地でもこのやり方で通すことが肝要ですよ」
 と、笑いながら話す赤城であったが、やはりその内心にじりじりとしたものがあったことは否めない。
 何より、幼い文月を狭い茶屋へ押し込めるようにして暮らさせているのである。
 これは再度の誘拐を防ぐ当然の措置であるとはいえ、健康な少女の心身に負担をかけていることは考えるまでもない。
 唯一、幸いといえるのは文月が老夫婦になついてくれていることだろう。
「もちろん、お客さんにばれないようにですけどね……たどたどしい手つきで、お爺さんの仕込みを手伝ったりしてくれてるんですよう」
 などと老婆は、まんざらでもなさそうに赤城へ語ったものだ。
 その状況が動いたのは昼過ぎ、泊地内に用意された士官食堂で赤城がカレーを食べていた時のことであった。
 本国の鎮守府ならば特別あつらえの艦娘用食堂があるが、遠方の泊地ともなれば過度な贅沢はできない。それでもさすがに一般兵卒と士官の食堂は区別されており、きちんとした給仕がついて食事を提供している。
 そして心得た顔で給仕が運んできたのは、
「バケツにカレーを盛ったような……」
 見る者によってはかえって食欲を失いかねない代物であったが、赤城は幸せそうにそれを食べていたのである。
 そうやってしばらく食べ進んでいたのだが、ふと、緩んでいた双眸がきりりと引きしまった。
 そして赤城は素早くカレーを食べ終え、食堂を辞していったのである。



 本国の鎮守府が、
「まるで学校のような……」
 と称されるほど、コンパクトにまとめられているのに対し、複数の桟橋や戦闘機用の滑走路、それらを運用するための各種施設がそびえ立つトラック泊地の威容は、いかにも基地らしい基地のそれであるといえる。
 これは国内の各種施設で役割を分担できる本国に対し、ここ一カ所で防衛や、数少なくなっているとはいえ貿易の機能を担わなければならないトラック泊地の用途をかんがみれば、当然の選択であるといえる。
 そういったわけでそれなりの規模を誇るトラック泊地なわけであるが、そうなると当然、人気の少ない場所が出てくるものである。かつての時代ならばともかく、対人戦などはなから想定されていない現代の基地ともなれば、なおのことだ。
 具体的に言うならば、所属する艦娘のために設けられた居住施設裏のことである。
 艦娘という、最前線の兵士にとっては信仰の対象ともいえる偉大な存在が住まう場所に用もなく近づく者など、あるはずはないのだ。
 これは、赤城がこれからすることにとっては、まことに都合のよいことであるといえる。
 居住施設の裏庭に出てきた赤城は、茶屋を訪れる時のようなラフな格好ではない。
 ミニスカートのような袴と弓道衣を身にまとい、更にその上から胸当て、屋筒、かけを身につけ、右肩には大盾のようなものを装着している。
 さらに手に持った長弓を見れば、これは一風変わった弓道着なのだろうと思ってしまいそうだが、そうではない。
 これこそが正規空母赤城の艤装であり、中世的な趣のこの装備には、現代兵器を遥かに凌駕する恐るべき戦力が秘められているのだ。
 その証拠に見よ! 赤城がたった今放った一矢は瞬く間に音速を超え、高空へと消え去って行くではないか!


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