過去ログ - 苗木「穴に落ちたら別世界?」舞園「たぶん違うと思います」
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39:カタツムリ ◆VVBcRnN7PuNW[saga]
2013/11/19(火) 01:50:30.69 ID:A7FV3f7I0
「当時、未来に何が起こるかは全て運命の女神の気分しだいだと考えられていたのです。
 そのため、博打に強い人間……つまり今現在において運命の女神に気に入られた人間は、
 明日の戦いにも勝てるだろうという発想がありました。
 つまり、彼らは明日の自分の運命を賭けていたのですわ。お分かりですか……? この意味が……?」

「……………………」

 苗木は沈黙する。
 しかし、セレスは気にすることなく続けた。

「ちなみに、fortuneのfortというのは元々『投げる』という意味がありましたの。
 『サイコロを投げる』の『投げる』ですわ。
 昔の賭博はみんな投げることで行っていましたので、投げるという意味のfortがクジという意味で使われるようになり、
 そこから運命や幸運……へと変化していきました。
 そして、その運命を味方にした者こそは強者であると信じられていたのです。
 …………あら? もしかして、その顔は信じていらっしゃらない?」

「え、そんなことないけど……」

 本当にそんな顔をした覚えはなかった。
 セレスの一方的な思い込みである。

 しかし、酔ったセレスはひたすら他者に絡んでいく。
 呂律は回っているし、話す内容もしっかりしている。
 だけど、いつもより会話が一方通行だった。

「要塞を意味するfort(フォート)、強くを意味するforte(フォルテ)……これも投げるのfortから来ています。
 つまり、サイコロ賭博は強さを意味します。
 先ほどのことわざも、その発想で訳するのなら、
 『さいころ博打をする人を運命の女神は助ける』という意味になりますわね」

「つ、つまり……?」

「戦略を圧倒する"力"、それが運。そして、生まれながらにして幸運をプログラムされているわたくし。
 わたくしが強くて、わたくしが勝者。そのわたくしが負けるはずがないではないですか」

「ソウデスネ……」

 セレスは嬉しそうに笑っている。
 その姿を見て、苗木は苦笑いを浮かべるしかない。

(こんなにひとつのことを語り続けるセレスさんは初めてだよ……)

 苗木は焦りながらひたすら相槌を打っていた。

(言葉やことわざなら……腐川さんに話した方がきっと有意義な気がするんだけど……)

 苗木はちらりと視線を腐川へと向けた。
 腐川は十神の近くをうろうろしつつ、ときたま、こちらの会話に耳を傾けていた。

(気になるなら……話にくればいいのに……)

 苗木は苦笑しつつ、腐川へと声をかけた。

「腐川さん……。ローマ時代の運命の女神の話なんだけど……」

 そう苗木は切り出し、腐川にも話を振っていった。
 すると、数分後には……。

「ぎ、ギリシャ神話やローマ神話では、運命の女神には他の神々も勝てなかったそうよ。
 勝てる……勝てない……というよりも独立した存在だったのね」

「つまり、ジョーカーという枠を通り越して、ルールそのものだったわけですね。
 まさに戦略を超えた存在……。わたくしにぴったりですわね」

「は、はぁ……? ま、まぁ、いいけど。あ、あんた、意外にことわざや語源に詳しいのね?
 他に何か知ってたりするわけ? た、例えば、他の運に関する……言葉とか?」

「あら、流石です。やはり、言葉は腐川さんにとって大切な武器のようですわね。
 とても貪欲な目をしていらっしゃいます。超高校級ならそうでなくては……。
 ……よろしいでしょう。それでは、チャンスやロットといった言葉についても……わたくしの至言を教えてさしあげます」

 特定の分野における教養や知識をセレスは非常に多く持っていた
 大きく分けて2つの分野だ。
 ひとつは、西洋趣味に由来するもの。もうひとつは、自身の運に対する自信の裏付けをするものだ。
 知識としてはやや偏っているのかもしれないが、そこもまたセレスのらしさを表していると言えるだろう。

 セレスと腐川の会話は予想外に盛り上がりそうであった。



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