過去ログ - 女「せっかくだしコワイ話してください」
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]
2013/11/19(火) 00:28:18.76 ID:t8zJLwEbO
電話の相手は私の母が死んだと言った。
受話器を握る指先が冷たくなり、全身の血が足もとに落ちていく音が聞こえてくるようだった。
警察署に駆けつけると父が既にいた、私と父は目を合わせなかった。
警察の人に案内されまま、私と父は簡素な霊安室へと入る。母の死体を見ると、いよいよ私は嗚咽を止められなかった。
母が死んだ、その事実を母だった死体にはっきりと告げられたようで、あふれる涙を抑えられなかった。
母の無惨な死体にすがりついて私は泣き叫んでいた。
このとき死体にすがりついたのは私だけだった。父はどんな顔をしていたのだろう。
その後の記憶は霧の奥に隠れてしまっている。
警察の人が死亡解剖がどうとか、死体検案書がどうとか言っていたが、それらには全て父が受け答えしていた。
私にはそれらの意味を理解する余裕はなかった。
母の死は私から時間の感覚さえ奪っていた。
気づいたら私は父と一緒に警察署を出ていた。
私も父も、自分たちの車でここまで来ていたので駐車場へ向かった。
「……これからどうなるんだろ?」
不意にそんな言葉が口をつく。
無意識に不安から出てしまった言葉はしかし、風にさらわれたのか、返事はない。
沈黙が冷たい風となって私と父の間をすり抜けていく。
私と父がそれ以降口を開くことはなかった。
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