過去ログ - オール安価でまどか☆マギカ 7
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993:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/17(木) 13:27:00.54 ID:W6RpX5zN0
「桃ちゃん、ちょっとだけダッシュ、オーケイ?」「えと…オーケイ…かな?」

桃子の足が遅い事くらいわかっている。
しかし、あまり見通しの良い所で身長に歩きすぎるのは駄目だ。翔平は桃子の手をしっかりと握り締めたまま、広場に出た。一気に走り抜ける。運動部のヒーローたちが集まる3年C組の中では、翔平の足の速さは中くらいだが、平均から見れば速い。桃子を半ば引きずるようにして、駆け抜けた。駆け抜けようと、した。ばんっ銃声。急に重くなる、左手。鳴り続ける、耳を劈くような音。数瞬遅れてやってきた、激しい痛み。

先に桃子が倒れ、それに引っ張られて翔平も膝をついた。
翔平は痛みの走る左脇腹を押さえた。
生ぬるい感触がし、手を開いてみると、赤く汚れた。

撃たれた…?
マジで…何で…誰が…?

疑問が次から次へと湧き上がった。
しかし、ここで重大な事を思い出した。
後ろを振り返る。

「桃ちゃん…? 桃ちゃん、大丈夫か!?」

大切な幼馴染は、辛うじて指先を動かした。
アイボリーカラーのカーディガンの背中側、ゆっくりと赤く染まっている。
白く細い右足も、濃い赤色に染まっている。

 

「えー…まだ生きてるのぉ?」

 

可愛らしい声が聞こえた。
言っている事は、対照的にとても恐ろしい事だったが。

「珠尚…ちゃん…」

翔平は呟いた。
ゆっくりと歩み寄ってくる少女の名を。
少女――逢坂珠尚(女子1番)は、少し不機嫌そうな表情を浮かべた。
クラス1小柄な珠尚の小さな手には、全く似合っていない回転式拳銃(S&W M686)が握られている。

「ちぇー、殺したと思ったのにぃ」

「…え……?」

珠尚の溜息混じりの言葉が、一瞬何を意味しているのか理解できなかった。こんな小さな女の子が、まさか“乗る”なんて思わなかったのだから。「珠尚ちゃん……ど…して…?」桃子が消え入りそうな声で訊いた。珠尚はすぐに答えた。はっきりと、絶対に自分が正しいという自信を持って。「だって、殺さなきゃ生き残れないんでしょ? 珠尚、死にたくないもん。 だから[ピーーー]んだもん」なんて利己的な理屈。だけど、プログラムの中では、もしかしたら正しい事なのかもしれない。とても哀しい、正しい事。「じゃあ……翔ちゃんは……関係無いから……逃がして……」翔平はばっと桃子を見た。桃子は苦痛とショックで泣きじゃくりながら、それでも真っ直ぐ珠尚を見つめていた。桃ちゃんが死んで…俺が残る…?そんなの駄目だ!!「桃ちゃん、何言ってんだ!!」「翔ちゃんは……死んじゃ……嫌――」「ううん、ダメー。 だって、珠尚は翔平くんとは生き残りたくないもん。 女の子は珠尚が残って、男の子は正純くんが生きるの。 それ以外はいーやっ!」桃子の提案は、あっという間に否定された。まるで子どもの我侭。珠尚が好きなのは潤井正純(男子2番)なんだ、とか。梶原匡充(男子4番)だって、同じ孤児院で育った仲だろうに、とか。そんな事は頭になかった。頭で考えるよりも先に、体が動いた。珠尚の小さな体を突き飛ばし、桃子を抱えて、一目散に逃げ出した。荷物などいらない、逃げ出せればそれでいい。クラスメイト同士が戦うなんてありえない、そう考えていた自分は甘かったのだろうか。死にたくないから[ピーーー]、という珠尚の我侭が、ここでは正しいのだろうか。確かに、わからなくはない。こんな所で死ぬなんて、絶対にお断りだ。だけど、自分にはとても実行できるとは思えない。人として、殺人は禁忌であるはずだ、そう思っていたから。「桃ちゃん……俺……甘かったの…かな……?」桃子からの返事はない。「血……足りなくなっちゃった……のか……」翔平は桃子の体をそっと下ろした。抱えていた両手は、真っ赤に染まっていた。護りたかった。護れなかった。全ては、自分の甘い考えが原因だ。「ちぇっ…なんだよ……生きるには……殺さなきゃ…駄目なのか…… やだなぁ……やだよぉ……桃ちゃん……っ」桃子は答えない。自分のせいで、答える事ができなくなった。『翔ちゃんは……死んじゃ……嫌――』桃子の最期の願い。せめて、これだけは護らないといけない、気がする。クラスメイトを傷つけるような真似はしたくない。


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