過去ログ - オール安価でまどか☆マギカ 7
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992:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/17(木) 13:23:50.46 ID:W6RpX5zN0
水上朱里(女子18番)とは違う、クラスメイト同士の殺し合いがついに始まったのだという事が、嫌でもわかる。
涙が滲み、次いで胃の辺りに違和感を憶え、喉の辺りがグルグルッと鳴った。
嘔吐しそうになるのを必死に堪え、翔平は部屋を這いずって出た。

「あー…見なきゃよかった…」

涙声で呟き、扉を閉めた。
桃子には見せられない。
卒倒してしまうだろうし、体調をさらに崩してしまうだろうから。

 

「翔ちゃん…?」

 

上から桃子の声がした。
不安になって、翔平を探したのだろう。
2人分の荷物を持ち、階段をトトトッと下りてきた。

「あれま、桃ちゃん。
 待っててって言ったのになぁ」

「えへへ…待ちくたびれちゃった」

桃子は翔平の前に荷物を置き――翔平の顔に目を止めた。
心配そうな瞳で覗き込む。

「…翔ちゃん……泣いてる……?
 悲しい事…あった…?」

翔平はそこで初めて自分の頬に涙が伝っている事に気付いた。
慌ててそれを拭い、首を横に振る。
気付かせてはいけない、この扉の奥の悲劇は。

「なーんでもないよ!
 さっきそこで激しく肘打っちゃってさ、痛かっただけ!
 ほら、ジーンってするっしょ、ね?」

必死の言い訳。
桃子は納得できていないようだった。
多分わかってしまっているんだ、これが強がりだという事は。
物心付いた時からの付き合いだ、当然かもしれない。

「…そっか、わかった」

桃子は微笑んだ。
昔から変わっていない。
翔平が必死に言い訳をして強がった時、桃子はそれがたとえ強がりだとわかっていてもそれ以上言及しない。
それが翔平を困らせる事だという事がわかっているからだろう。

桃子は優しい。
生まれつき病弱で、何度も何度も入院しなければならないような体をしているのに、人の事を気にかける。
つぶらで優しげな瞳が、その性格を表しているようだ。

そんな桃子が、とても好きだ。
ずっと前から。

だから、決めた。
この優しくて弱い女の子を、何が何でも護る、と。

「じゃ、少し頑張ってな。
 保健館に行こう」

焼けた浅黒い手を差し伸べる。
その上に、雪のように白い手が乗る。
白いその手は、とてもとても小さくて、とてもとても細かった。
それをきゅっと握り締め、2人は外に出た。

まだ薄暗い外は、あちこちに設置された電灯に照らされているため、懐中電灯などは使わなくても十分移動できる。武器はない。翔平のスポーツバッグの中に入っていたのは野球ボール1ダースだし、桃子にはメガホンが支給されていた。なんだよ、野球部の応援グッズか?もっとも、さっきまでは武器なんていらないと思っていた。クラスメイト同士が争うなどという事が考えられなかったので。しかし、尚明と奏太が死んでいる。ということは、襲ってくる人だっている、という事だ。山神弘也(男子17番)は「男には容赦しない」というニュアンスの言葉を発していた。翔平は冗談か、せいぜい脅し程度にしか考えていなかった。しかし、今となってはあの言葉も本気と考えた方が身のためだろう。文学部棟の前には、広場が広がっている。草木が覆い茂った場所で、恐らく学生たちが楽しくランチタイムを過ごしたり、遊んだりしていた場所だろう。周りを囲む植木からそっと中を覗いたが、誰もいない。だだっ広い所を横切るのは危険かもしれないが、保健館への距離を大幅に短縮できるので、横切ることにした。



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