18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/12/05(木) 00:08:12.31 ID:My2ZDWWTo
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――今日、時間あるッ?
今眼前で行われている作業に支障のない程度の音を立てて、一人のアイドルがスタジオに現れたかと思えば、俺の下へ来てそう訊ねた。
どこから来たのだろう、軽く肩を上下させ、この寒空のせいか顔も赤い。
彼女は、いかにも運動が好きそうな、快活なスタイルと長いポニーテールが特徴の子、愛野渚であった。
本来の仕事中であればたしなめるべき状況だが、今回の撮影はアイドル主導でどんどん行われているため、多少の割り込みは見逃してやることにする。
「今日って……午後からか?」
現在の時刻は午前十一時。
午前九時にセッティングや打ち合わせを行い、少し前から撮影が本格的に始まったところである。
「そォ。行ける?」
こういう時は先に用件を述べなければ会話は進行しないだろうに、と思いつつ、今朝確認したスケジュールを脳裏に浮かべた。
「まあ、そうだな。午後からはレッスンのサポートの予定だから必要なら時間は空けられるけど……で、どういう理由でだ?」
「翠のことなんだッ」
背後からカメラマンの威勢のいい掛け声が響く。
その中で、渚は『翠』という言葉を口にした。
「翠? 水野翠か?」
齟齬の無いように確認する。
いや、彼女が口にする『みどり』が『翠』でない確率はそう高くもないのだが、如何せん一発で理解させるには突然すぎる。
「そ、翠。あの子のためにプロデューサーの午後、借りれないかなッ?」
「……悪い、ちょっと飲み込めない。最初から話してくれないか」
現在の位置でも撮影エリアからは大分離れた所にいるのだが、それでも話し込んでは撮影の邪魔になる。
渚を手招きして、ドア付近、照明が殆ど届かない所にまで誘った。
一挙一動、それらを写しだす写真は被写体だけがすべてではないのだから、出来るだけ不純物は取り除いてやるべき、と判断したのだ。
渚はというと、移動する俺に抵抗すること無くついてきて、俺の思案を察して今以上に小さな声で事の経緯を話し始めた。
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