過去ログ - 翠「迷いと遊び、心の中に」
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22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/12/05(木) 00:10:10.92 ID:My2ZDWWTo


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 十二月の寒空は、まだまだこれから寒くなるだろうにも関わらず、一番寒いと思ってしまいそうな風を街中に吹き込んでいた。
 みっともない格好だが、俺はイルミネーションの取り付けが行われている人通りの多い道の真ん中、大きな木が植えられた広場でポケットに手を突っ込んで待っていた。

 何故この時間、こんな場所に立っているのか。
 無論、わざわざ身を震えさせる趣味などない。理由といえば、今朝の続き、とも言うべきだろう。
 寒い膜の張った手をポケットから渋々取り出すと、そこに握られていた携帯電話を開いてメールを眺める。

 ――午後ニ時、街の広場にて。

 渚のメール。要約すると待ち合わせの連絡であった。
 確かに空き時間があるとは言ったが、それは翠と話す時間を設けようとしたのであって、買い物にいくために時間を作った訳ではない。
 それを問いただせば、彼女は明日は翠の誕生日だから、とこちらに伝えたのだった。

 そう言われては断れない。

 当然、プロデューサーとしてそれを把握していない筈がない、というよりも、無視できるはずもないのだが。
 メールの文面から察するに、大方明日訪れる翠の誕生日プレゼントを今日買いに行こう、という魂胆だろう。
 もっと事前に購入しておくべきだと一つ言っておくべきかとも思ったが、みんなアイドルの仕事と練習で日々忙しいのだ。多少遅れたことを責める道理はない。

 パチリ、と携帯電話を閉じる。
 このご時世、いい加減スマートフォンに乗り換えたほうがいいのかもしれない。
 現に何人かのアイドルからは誘われているのだが、大人となると色々面倒なのだ、とその度に説得をかわしている。
 実際便利なのは事実だからな、と寒空を仰ぐ。

 ポケットに仕舞う際、サブディスプレイから時刻を知る。


 もうすぐ二時だ。
 実を言うと俺はもうささやかながらプレゼントを購入しているので渚の買い物に付き合うだけなのだが、せっかくだからウィンドウショッピングでも楽しもうか。

 そう思ってふと正面を向き直したその刹那。

「え……Pさん?」


 季節相応の秋色のコートを着込んだ翠が困惑して立ち尽くしていた。





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