7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:12:24.13 ID:bV1zFA7X0
俺は夢見るバンドマンだ。
この一文だけを見ると、何となく駄目な若者を想像してしまう。
自分で言うのも可笑しいのだが、俺は駄目な若者ではない、つもりだ。
適当な気持ちでこの道を選んだわけではないし、何よりメジャーデビューの話も来ているのだ。
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/12/06(金) 01:13:05.13 ID:bV1zFA7X0
正直音楽にたいして興味もなかった。何故入ったかというと、先輩にバンドをすると女の子にモテると言われたからだ。
そんな軽い気持ちで始めたのだけど、いつの間にか俺の中で火がついた。先輩達との温度差が原因でそのバンドを抜け、もっと上手なバンドに入れてもらった。
その頃はまだプロを目指していたわけではない。
ただもっと良い演奏をしたかった、それだけだった。それがいつしか、もっとたくさんの人に聞かしたい、へと変わった。
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:13:36.31 ID:bV1zFA7X0
俺は一度ライブを見てくれと言ったが、相手にされなかった。
俺は頭にきて、生まれて初めて父さんと喧嘩をした。
簡単に認めてくれるとは思ってなどいなかった。でも、あそこまで相手にされないと思わなかった。
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:14:21.13 ID:bV1zFA7X0
しかし悪いことばかりでは無かった。父と険悪になった代わりに、母との仲が良くなったのだ。
俺は小さい頃から母が嫌いだった。
父の言いなりだからだ。母は父に一切逆らわないのだ。
それが情けなく見えて、母のことが嫌いだった。
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:14:55.47 ID:bV1zFA7X0
「何してるの?」
縁側でタバコを吸ってると、いつの間にか由井ちゃんが近くにいた。
「不法侵入だぞ」
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:15:43.52 ID:bV1zFA7X0
「で、何してるの」
由井ちゃんは、顔を近付けて尋ねてくる。
その勢いに押されながら答えた。
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:16:25.84 ID:bV1zFA7X0
「こっちの空は大きいな」
「どこでも一緒でしょ?」
「いや、東京の空は狭いよ」
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:16:59.64 ID:bV1zFA7X0
「んー、どんなとこってなぁ。人が多くて」
「じゃ、じゃあ、可愛い子とかもいっぱいいるの?」
「なに、女の子好きなの?」
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:18:02.87 ID:bV1zFA7X0
********
夜は久しぶりに、母さんの手料理を食べた。手料理自体が久しぶりだったから、とても上手く感じた。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:18:40.21 ID:bV1zFA7X0
これはまずかったと思い、母さんの顔を伺った。
母さんは悲しそうな顔で俺を見つめる。
「…ごめんって」
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:19:16.74 ID:bV1zFA7X0
「父さんはねワザとあんたに厳しくしたんよ、あんが自分と似ているから。下手に優しくされるよりも否定された方が反発して頑張れるタイプだと分かってたから」
母の突然の告白に戸惑う。
本当なのだろうか、それとも最後に父親と顔を会わさせる為の嘘なのだろうか。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:19:46.96 ID:bV1zFA7X0
庭で大きな木を眺めていた。
ぼーっと、何も考えずに眺めていた。
この木はあいつが植えたものだ。
小さな俺があいつにお願いしたのだ。今考えると、とても下らない理由で欲しがったものだ。
忍者になろうとして、木を植えてくれと頼んだのだ。
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:20:18.98 ID:bV1zFA7X0
俺は中々成長しない木に飽きてしまって、いつの間にか跳ぶのをやめていた。
そして気づかないうちに木は、俺が跳べやしない高さまで成長していた。
そんな俺を見て、父さんは笑ったのだった。
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/12/06(金) 01:22:08.01 ID:bV1zFA7X0
父さんの部屋に入ると、病人の匂いがした。
「よお」
「なんだ、東京から逃げて来たか?」
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:22:43.16 ID:bV1zFA7X0
「父さん、こっち見なよ」
「…やだな」
「東京はさ、色々としんどいとこだった。そこで頑張れたのはさ、父さんがいたからだよ。むかつく背中がいつも心の中にあったから、だから頑張れたんだよ」
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/12/06(金) 01:23:55.48 ID:bV1zFA7X0
いつの間にか、父さんの顔には沢山のシワが出来ていた。
父さんはジックリと俺の顔を眺めると、涙を流した。
目を閉じて、声を殺して泣いている。
そしてゆっくりと目を開けてから、口を開いた。
23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/12/06(金) 01:29:57.92 ID:pNczeL9Vo
乙!
24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/12/06(金) 02:12:34.58 ID:xtNFhX/80
乙。途中まで和解ENDなのかほんとに鬱ENDなのかわからんかった
幼馴染の出番ェ
25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/12/06(金) 18:28:35.16 ID:v8eCbKvN0
こういうアンチヒーロー気取りの糞親 はマジで糞な親よりもムカつくわ
26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/12/06(金) 19:51:34.57 ID:401+cNzno
おつ
27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/12/07(土) 09:49:23.48 ID:JxzYe7jOO
乙
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