過去ログ - きっと彼の青春ラブコメは間違っている
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100: ◆0NaiNtVZPPaZ[saga]
2013/12/15(日) 16:05:42.22 ID:HH0NU3mX0
少女の心臓の鼓動が否応なく早くなる。全身の血液が冷たくなるのに対し、瞳が熱くなる。思わず、両目を強く閉じた。

そして、彼は右手を振り下ろした。

???「ガキがこんな時間にこんな場所うろついてんじゃねえ!」

少女の脳天めがけて男のチョップが炸裂する。かなり痛かったらしく少女は涙目になりながら頭に手を当てた。

???「え、え?あの?」

???「会ったのが俺みてえな人畜無害なやつだからよかったけどなぁ、もしあそこで寝てる三人と会ってたら、今頃身包み全部奪われてる上に貞操を守るために泣き叫んでたぞ!」

その言葉で少女の顔が青ざめる。先ほど感じた現実離れした恐怖よりもさらに上の、想像のできる現実味のある恐怖が背中に冷たいなにかを感じさせた。

???「分かったらとっとと人通りの多いところに行きやがれ。つうか自転車あんだからそにを……あぁ」

そこで彼女が持っている自転車に視線を移した男は初めて自転車が乗れない事に気づいた。

???「こ、これ……お兄ちゃんから借りたんですけど、途中でチェーンが……」

この状況でもうすでに苦笑いを浮かべられるようになった少女のメンタルの強さに驚きながら、男は自転車に近づいた。

???「はあ……」

わざととしか思えないようなため息をついて彼はチェーンの部分に手を伸ばす。

???「あの……なにしてるんですか?」

???「自転車直してやってんだよ……っと、ほら」

外れていたチェーンは見事にあるべき場所に戻り、スムーズに押せるようになっていた。

???「これで大丈夫だろ、ほらとっとと帰って、そのお兄ちゃんとやらに文句の一つでも言ってこい」

???「え、えーと……ありがとうございます?」

???「口止め料だ。礼を言われる筋合いはねえ」

その言葉を聞いて少女の顔にいつも通りの笑みが戻る。

???「そうですか……。それじゃあ、言われたとおりすぐ帰りますね」

???「ああ、そうしろ。あと、さっきも言ったが、このことは誰にも言うなよ」

???「ふふ、分かってますよー」

???「ならいい。あ、その三人には触れないようにしろよ。何がきっかけで血が吹き出すか分からねえから」

???「ひっ!?」

収まりかけていた恐怖を軽く呼び起こされながら、彼女は自転車に跨がった。忠告どおりに三人を慎重に避けきると漕ぎ出す前に小さく呟いた。

???「なんだがお兄ちゃんみたいな人……。小町的にポイント高いかも」

その声は誰に届くことなく夜闇に溶けて消えていった。


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