過去ログ - 日向「信じて送り出した七海が」狛枝「2スレ目かな」
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551:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/12/27(金) 17:44:37.90 ID:kYff4rAe0
自分が立っているのか、座っているのか、横になっているのか、それすら判らないくらい深い闇の中に、康明はいた。目を開けても、目を閉じても、前に広がるのは漆黒の闇だけ。上下左右、視界に入るすべて、いや自分の感じることのできるすべては暗闇だけだった。
ふと、目の前に少女が現れた。小学生かそれくらいだろうか。彼女の髪の毛は闇の中でも映えるくらいのつやがあり黒く、彼女の肌は周りの闇とのコントラストで浮かび上がるほど白かった。康明はこの少女を知っていると思った。ただ、誰だろうと記憶を探ってみても、絡まった糸のようにもつれた記憶が答えにたどり着けない。
どれくらいそうしていただろうか。ふと、少女の顔がゆがみだした。と、顔だけじゃなく周りのすべてが歪みだした。漆黒の闇ですら、そう認識できるほど、水に石を投げた波紋が広がるように歪んでいた。
「……!」
康明は少女の名前を叫んだ。しかし、その名前は声となって康明の口からこぼれることはなかった。次の瞬間、康明の体自体が歪みだした――。

「…き、……き、おい、黒木!」
目が覚めたとき、最初に思ったのは頬にあたる地面の冷たさだった。瞬時に、自分がうつぶせに倒れているのに気づき、おくれてそこがさっきまでいたはずの教室ではないと気づいた。
ここはどこだ?急に眠くなって、それで…
康明は顔を上げた。ずんとした痛みが頭の後ろ、首筋に走った。その鈍い痛みに、めまいがして、軽く目を閉じる。しばらくそうしていると、痛みが引いていって、頭がはっきりしてきた。軽く頭を振って、上半身を起こした。まばたきを二、三回くりかえすと、体が心なしか軽くなったような気がした。
「黒木、大丈夫か?」
二、三度頭を振って、声のするように顔を向けた。そこには加藤勇の姿があった。康明は体を起こしながら、加藤に声をかける。
「…会長…? 」
「気づいたか、黒木」
加藤はほっとしたように康明に笑いかけた。
「…ここは…?」
「わからん。俺もさっき気づいたばっかりだ。何が何だか…」
そのまま回りを見渡すと、クラスメイト達が床に倒れていた。何人かは康明のように目を覚まして起き上がり始めていた。康明の隣で、加藤がぶるぶると頭を振り、ずれたメガネを直した。
「でも、確かにここはどこなんだろうな。それに、何でこんなところに…?」
そんな言葉を聴きながら、康明は周りを見回した。教室よりちょっと広いくらいの部屋に、3?5の生徒たちがいた。数えていないので判らないが、おそらく全員いるのだろう。まだ倒れている生徒もいれば、康明たちのように体を起こして話し合っているものもいる。並び順は、教室の机の並びと同じようで、後ろには加藤、前には寝ている戸田弘樹の姿があった。そして、すぐ横に自分の鞄が置いてあった。みんなそれぞれ自分の荷物が脇に置かれているようだった。
半分くらいの生徒が目を覚まして、康明たちのように会話をしていた。小声の会話がみんなの不安を表しているようだ。
「あ、黒木、起きた?」
祐介がそういいながら康明たちのほうにすりよってきた。なんとなく立ってはいけないという雰囲気があるのか、座ったまま手だけで移動してきた。
「祐介、ここはどこだと思う?」
答えられないだろうな、とおもいつつ、さっきと同じ質問をぶつけてみた。
「よくはわからないけど、船の中っぽいよ」
「船?」康明と加藤の声がユニゾンした。
「うん。窓が丸いし、天井か壁とか床とか金属だし、それに何よりこの揺れがね」
そう祐介に言われて、初めて康明は揺れを感じた。いや、今まで感じていたが認識してなかっただけだった。祐介の言うように、不定期にゆれていた。地面の上ではこんなにゆれない。また、車や飛行機なんかの乗り物とも、地震の揺れとも違う。やっぱり船だ。それもそこそこ大きな船だと感じた。
改めて辺りを見回すと、かなり広い部屋のようだった。その部屋の中に、康明たち五組の人間が詰め込まれていた。ドアは康明から見て前方に一つと、右側に一つ。窓は丸窓が康明の左側の壁に並んでいた。
「これ、何なの?」
康明は心に思っていた最大の懸念を口に出した。
「……」
「さあ? 僕にはわからないよ。この首輪の意味もわからないし」
祐介が自分の首に巻かれた銀の首輪を触りながらいった。そのとき、康明は自分にもそれと同じものがまかれている事に気づいた。首輪! ペットの犬や猫のように、首にはしっかりと巻かれていた。周りを見るとみんなの首にも同じようなものが巻かれていた。
「な、なんなんだよ。これ……」
「……予想はできる。あたってほしくはない、最悪の予想だがな」
加藤がぽつりと呟くように言った。最悪の予想?と言いかけて、康明ははっとした。
クラス全員、みずしらずの場所、訳のわからない首輪、中学三年生、五十クラスに一組…
「まさか、これって………」
加藤は無言で、何かを考え込むようにあごに手をあて、市川はかたをすくめただけだった。
?やっぱり、これって………
「やすくん!」
声とともに、康明の右腕にしがみついてきたのは、長谷川せつなだった。教室の並び順でせつなは通路を挟んで康明の隣に座っているため、目を覚まして状況を確認する前にとっさに康明の腕をつかんだようだった。彼女の手というか全身が小刻みに震えている。状況を理解しようとしてるのか軽く頭を振って周りを見渡した。
「ねえ、やすくん! これって、これって、これって」
壊れたCDプレーヤーのように同じ言葉を繰り返すせつなの手を握って落ち着かせながら、康明は答えた。
「僕にも、わからない。でも、多分………」
その瞬間、康明たちの前方にある扉が勢いよく開いた。そして銃を持ち、軍服とおもわれるものに身を固めた、兵士と思われる男たちが飛び出して、五組の人間たちを取り囲むように並びだした。その音と動きに驚いて康明は前のめりになっていた体を元に戻した。
みんな何が起きたかわからず、喋り声も止まり、ただただおびえた顔で整列をみていた。ほぼ取り囲み終わったくらいのタイミングで、扉から大柄な男が現れた。左手にはバイオリンらしきものをつかみ、右手には楽器用の弓を持っていた。まわりの兵士たちが背すしを延ばしたところを見ると、このバイオリンが兵士たちのボスらしかった。


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