過去ログ - 日向「信じて送り出した七海が」狛枝「2スレ目かな」
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2013/12/27(金) 19:54:58.55 ID:kYff4rAe0
【40】
淡本綾唯(女子1番)は、駅に向かって歩いていた。海原青歌(女子2番)がそこにいるのだと、 信じて。こんなことなら、校門で待ち伏せしていればよかった。たとえ危なくともずっと待っていれば すぐ青歌に会えたはずだ。後悔先に立たずとはまさにこのことだろう。何で今までずっと気付かなかった。今は安心できない。黄泉泉(女子20番)の安否も気にかかる。 一刻も早く見つけなければ二人も自分も危ない。 それまでなんとかいてほしい。 小学生になり、初等部に進級し、1年A組の教室に向かったあの日。出席番号が1番なので、一番前の席に座った。初めて見かける生徒もいれば、どこかで見かけたことのあるような人もいた。しかし、どっちにしろ、綾唯はどうでもよかった。誰かと仲良くなることは面倒で、一々他人に構っていられなかったから。担任の先生が来て、簡単な話を聞き終え、休み時間になったとき、後ろから肩をつつかれ、振り向くと当時は長髪で気の強そうな目をした青歌がニッと笑っていた。
「お前、俺の前の席だろ?」
「……え、あ、ああ」
「名前なんて言うんだったっけ?あの廊下の右側に貼ってあった名前がいっぱいの紙、もうなくなって
たから覚えられなかったんだ」
「淡本綾唯……」
「あやゆい?なんか呼びにくいからあやゆーでいいや!俺、海原青歌!名前の由来母さんに聞いたこと
あるけど青歌って青春の歌をうたえるように、だってさ、笑っちゃうよなー、あやゆーは?」
最初は馴れ馴れしくて、一人称が俺、しかも思ったことをすぐ口に出す奴だと衝撃をうけた。勝手にあ
だ名をつけられたが、呼びにくいのは本当のことだった。自分でも綾唯って自己紹介するのに随分と苦
労する。どうしてこんな名前をつけたんだと両親に文句をつけたい。今となっては、もうどうでもよくなってきて「あやゆー」と呼ばれることに慣れてきたけれども。確か、2年生のときもこんな会話をしたことがあった。 「なーあやゆー、何で此処に入ったんだ?」 「我か。……我の理由は秘密となっている」 「なんだそれ、学園側からの命令か?」 「そうなっている」 「なんでもかんでもあの偉い学園長かー。まあしょうがないよな、みんなわけあってここにいるし」 「……汝は?」 「俺がここにいる理由?そうだな……俺も秘密だ」 今思えば、改めて思い出せば、青歌は理由を訊かれたとき、さみしそうな目をしていた。 何故青歌はそんな目をしたんだろうか。過去に何かあったのかはよくわからない。だが、誰もがみんなほとんどわけあってあの青空学園にいるのだから。そういう場所だって充分わかっている。なら、青歌も何かあったのか。 駅が見えた時点で既に綾唯の足はスピードを速めていた。早く見つけるため、ディパックのひもを担いでいた左肩から右肩に変えて走り出した。微かだが、自分の足音とは違う誰かの足音が聞こえてきた。まちがいない。青歌はそこにいる。 「青歌!」 駅の入り口に足を踏み入れた。木の傍にいた青歌が驚いてこっちを見ていた。どこにも怪我はない。無事だったのだと綾唯はホッと胸をなでおろした。なるだけいつもどおりに接しようと青歌に近付いた。 「汝、大丈夫だったか。行くぞ、一緒に……」 「来るな」 途中で遮られ、青歌の声が冷たく飛んだ。一瞬何を言われたのかわからなかった。綾唯は不審に思い、首をかしげる。 「青歌」 「来んな。悪いけど一緒には行けない。ひとりにさせてくれ」 汝、何を言っているんだ。ひとりにさせろ、と今まで何も言わなかったのではないか? 何故、そういうことを言う? 「……何故だ」 「うるさい。ひとりになりたい。それだけだっての。わかったらさっさとどっか行け」 普段の青歌は淡々と言わない。そう考えた矢先、少しだが、青歌の肩が震えていた。そこで綾唯は再び思い出した。理由を尋ねたとき、間が空いて秘密だと言った、青歌のさみしそうな目。 そうだ。多分、青歌は強がっている。 「……汝、それは逆だ」 「……は?」 綾唯の言葉に、青歌はいまいち理解できなかったのだろう。多少苛付いている様子だった。綾唯は、続けた。 「青空学園の生徒は、ほとんど理由があって通っている。我もそうだし、汝もそうだ。……何を強がる必要がある。辛いときは頼ってくれていい。楽になっていいんだ」 そう、もう楽でいい。 そのためにあの学園に通っているのだから。 「言え、青歌。何が汝を苦しませる」 「……言ったら、泣くに決まっているだろうが」 青歌は少し戸惑ったように、困惑する表情をして俯いた。その間、綾唯は青歌に近付いて手を差し伸べる。元々、自分も青歌も最初は素直ではなかった。でも、今は。 「ともだち」 小さく呟くような声で言うと綾唯はいつもの笑みを浮かべた。さらに青歌に見えるように手を少し動かして伸ばす。綾唯の言葉に青歌は俯いた顔を上げ、しばらくきょとんと目を丸くしたのもつかの間、青歌の頬を涙がゆっくり伝った。 「あやゆーのバカ……っ!」 か細く、でもやはり気の強い声を発したあと、青歌は綾唯の手を掴んでそれっきりずっと泣き続けた。
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