86: ◆IpxC/P/Kzg[saga]
2013/12/26(木) 15:05:58.70 ID:254l1QJ3o
【あずきの誘惑】
桃井あずきの大作戦は今にはじまったことではない。
湯けむりメルヘン艶娘。これからも続いていくことであろうと思った。
ただ、ある日あるときから、その誘惑はぴたりと収まった。
そして誰がどうみても異常なまでに大人びた言動をするようになった。
どうしたのかと心配してみても「ううん」と首をふるばかり。
「また、失敗しちゃうのかな」と、最後に交わした会話はそれだった。
俺はあずきが心配で仕方がなかった。プロデューサーとして、男として。
ただ、アイドルである以上は、誘惑などいけない。そう思っていた。
家にまで押しかけて迷惑かと思ったが、俺はインターホンを鳴らしていた。
ドアを開け、一瞬俺を見た顔は嬉しそうだったが、すぐに寂しそうな表情をしていた。
「上がって」その一言だけが聞こえ、俺は彼女のあとを着いていった。
お茶を出してくれて、そして、彼女はぽつりとつぶやいた。
「プロデューサーさんは、私のこと、嫌いだった?」
「誘惑ばっかりして。可愛い、って思ってもらえなかったのかな」
どうして何もかも過去形なのだろう。あずきは涙を流しながら語った。
誘惑ばかりしていたから? 本気にしてもらえなかったのかな。
でも、じゃあ、私はどんな私になってたら、幸せになれたんだろう、と。
『今までさ。あんまり、こういうこと話したこと、なかったよな』
『俺はあずきが好きだ。でも、今のあずきはアイドルなんだ』
『だから、あの日……あの日? 俺は……いつだ?』
それは、いつの話だ?
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