過去ログ - 【咲だ】絹恵「サッカーバトルや！」洋榎「イナイレのやな」【安価だ】 -SS速報VIP

過去ログ - 【咲だ】絹恵「サッカーバトルや！」洋榎「イナイレのやな」【安価だ】

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33: ◆y1N9qpFpt6[saga]
2014/01/14(火) 20:57:05.72 ID:TGIDGZBY0

絹恵がその『秘伝書』を見たのは、中学生の頃京都に遠足に行った時のことであった。

班別行動の折、何となしに入ったその怪しげな店。

四方を覆うかのように陳列されたその『秘伝書』は、様々な値段のものがあった。

サラリーマンの月収ぐらいするもの、中学生がお母さんに徴収された後のお年玉でなんとか買えそうなもの――そういった中で、絹恵はふと格別に安いものを見つけた。

その値段、100円。なんと彼女の家の近所にある、チェリオの自販機で買える炭酸飲料と同じ値段だった。

絹恵「あのー、すいませーん」

店主「……なんや」ﾋｮｺ

ちょうど『必殺技』をどう出したもんか、と苦悩していた時期の彼女だっただけに、その100円に少し興味が沸いた。

奥から現れた京都というよりも大阪の訛りが強い店主に、絹恵は質問した。

絹恵「なんでこの『秘伝書』だけ、こんなに安いんですか？」

店主「ああん？ ……あぁ、それか。それはやめとき。俺がいうのも何やけど、それ買うより自販機でジュース飲んだ方がええわ」

絹恵「えっ……でも、100円ですよ？」

店主「安いもんには理由があるんや」

ええか、と前置きして彼は言葉を続けた。

店主「大体それよー見てみぃ。一部分が欠けとるやろ」

絹恵「あっ」

言われてから気づいたが、表紙と背表紙こそ健在だが中身はビリビリにさかれている。

中身よりも破られた方のページの方が多い程である。

店主「大体それで三分の一……まぁそれでも一応『必殺技』一個丸々書いとるんやけどな」

絹恵「じゃ、じゃあ……」

店主「しかしこっからが問題や。その『必殺技』は俺が生まれる前から、どっかの古本屋だの秘宝堂だのをフラフラしとったらしいけど……まだ誰も、一回も会得できてないらしいねん」

絹恵「ええっ！？」

それは確かに奇妙な話だった。

『秘伝書』に載った『必殺技』が使い手を選ぶといっても、幾らなんでも眼前にいる中年の男よりも前の時代から誰も使えないというのは不自然だった。

そうするとこのビリビリに破れたものに載っている『必殺技』というのは、つまり。

絹恵「とんでもない大技か、それとも……ただの妄想を書いた本……」

店主「まぁ、一対九ぐらいの割合でそうやろうな。全く、あの時は俺も若かったわ。無駄に年季入っとるから本物やと思い込んでもうたんやなぁ……」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

絹恵「……」

……結論から言えば、その『秘伝書』は本物だった。何しろ、そこに書いてある『必殺技』を彼女自身が会得したのだから。

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