過去ログ - オティヌス「見つめる世界」トール「忘れ物を捜しに」
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21: ◆e67wD8MYCo[saga]
2014/01/22(水) 20:32:32.84 ID:7J10IGLe0
そう、充分だった。外から見れば。
ただ……ただ彼には――――

――――ゴールがなかった

彼には目標がない。誰より強くなりたいとか、誰に勝ちたいという行き先がない。強いヤツと出会って、自分の経験値になりそうだから戦う。そんな、行き当たりばったりのやり方だった。
でも、だけど。
彼はその前に一人の人間だった。魔術師を名乗る前に一人の少年だった。
トールも本来なら学校へ行き、部活とか恋愛とか、そんな他愛もない体験をするべき少年の一人である。
だが、世界は彼の才能をそんな『平凡』に置いておく事を許さなかった。
気づけば彼は戦争に駆り出され、守りたいものもないのにその力を振るい勝利だけを奪い去っていく。
誰もがヒーローに感謝しただろう。誰もそのヒーローの心なんか気にしなかっただろう。
誰も少年の弱さを、敗北を認めなかった。
だからある日突然、少年の中で何かの糸がプッツリと切れた。
そして少年は何かを失い。
圧倒的な力だけが少年を高みへと昇らせ続けた。

「……なあ神裂。これっておかしい事なのか? 俺にはオティヌスの気持ちがよくわかるんだよ。アイツを理解できちまうんだよ」

「……悪役の心をヒーローが理解するな、という事ですか」

「俺は一度としてヒーローになったなんて思った事ねえけどな」

何が問題だったのか。
ただやりたいように戦った結果、何人かの命を守ってしまった事か。
それとも自分の力の危険性を正しく理解して、周りへの被害を最小限にとどめた事か。
そんな事は彼にとって礼儀作法にすぎなかったのに。周りはその当たり前を称賛し、トールを担ぎあげた。
そしてその声を見過ごせる程、トールは非常になりきれなかったのだ。

「俺は……」




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