6:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga ]
2014/01/21(火) 16:13:57.75 ID:lNtic1pq0
その後のことについてはあまり気分のいい思い出でもないので割愛するが、その女性の命を奪ったのは野蛮な男の両手であったことだけは言っておきたい。
所謂、絞殺という手法だ。
よく比べられる首吊りとは異なり、手の力では気道を塞ぐことはできても頚動脈を締め付けることが出来ないので、脳へ酸素は送られたままの状態で意識が失われるのを待つこととなる。
その苦しみは、似通った方法に思われがちな両者の間でも、天と地程の差がある。よく推理小説などで男が憎い女を殺すときにこの手を使うのは、至極当然なことかもしれない。
と、こんなことを考えられるのは様々な死を体験した今だからこそであって、当時はただ苦しみに耐えることしかできない。
いつまでも消えない男の顔と、体の呻き。幼き日の僕は、心の底から死を願った。
ハヤクシネ、ハヤクシネ。
その後、僕の意識はまるで何事もなかったかのように小さな肉体に戻ってきた。テレビではあいも変わらずひな壇芸人たちが何かをはやしたてている。
呼吸は正常。首に痣も出来ていない。憎くてたまらなかった野獣も、どこかに消えてしまった。
夢にしては生々しく、現実というのには無理があるこの体験。
臨死。死んでしまえばそれまでだが、生きているのならその恐怖からは一生逃れられない。
ただ...僕は泣かなかった。いや、泣けなかった。身体の底から寒くて寒くてたまらなかったが、母親に泣きつくこともなく、父親に守ってもらうこともなく、一人でその場を立ち去った。
二人に何を言っても仕方がない。僕達はもう、普通には暮らせないのだから。
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