14:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:50:10.78 ID:4dDXRU7No
「あ、いや、気にしないでください! 普段のお礼ですから!」
翠は中腰になっている俺の肩に手を触れて抑えようとする。決して強い力ではないが、その顔を見ると言葉は冗談ではなさそうだ。
「とはいってもな……アイドルに奢られちゃ立つ瀬がないぞ」
目上目下で上下関係を作るのはどちらの立場としても苦手なのだが、どうも自分より年下の、それもアイドルから奢ってもらうというのは些か気まずい。
かといって、翠の制止を振り切って手のひらに硬貨を無理やり押し込もうとすれば彼女をまたいらぬ気遣いをさせてしまいかねない。
ここはありがたく頂戴すべきか、と椅子に座り直す俺の姿を見た翠は安堵した表情を見せ、言い淀むようにゆっくりと呟いた。
「ええと、その……気を遣ったとかしういう意味じゃなくて。……何だか、懐かしいなって思ったんです」
静かな動きで翠は俺の隣の椅子に座り――顔を上げたその横顔に、昔の面影が映り込んだ。
ノートパソコン内部の風音がテレビの代役を買って出ている。
静寂とも喧騒とも言えない、そんなノイズが昼下がりへ向かう時を演出していた。
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