15:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:52:01.24 ID:4dDXRU7No
「覚えてますか、私が初めてPさんの家に行った日のことを」
遥か遠くの世界に思いを馳せるような、僅かな笑み。
もはやそれだけではっきりと世界が変わるのを感じた。
「……勿論。忘れる訳がない」
先ほどまで熱い視線を送っていたノートパソコンは、放置によりふてくされて画面を黒くしてしまっている。
故に、時間の経過を証明するものは己の心音のみになっていた。
「ふふ、私も若かったですね」
口元に手を寄せて翠が笑う。
くすくすと小さく零す度に、彼女の長い髪が清流を描いた。
「今でも若いだろうに」
俺と共に歩んできた軌跡の元を辿れば、その姿はずっと幼い。
当時から翠はしっかりとして芯があると思ってはいたが、それは高校生という基準があったからこそであって、今の彼女を見れば当時の姿を幼いと思うのも無理はないだろう。
「……本当に、若かったです」
途端、彼女に笑みが消えた。
少し遠くに向けていた視線を落としては、手元にあるビニール袋で手を遊ばせている。
その色は、朗らかという訳でもなければ悲哀に満ちている訳でもない。
あえて言うならば、複雑な感情を抱いている、そう思わせる表情であった。
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