6:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:37:01.01 ID:4dDXRU7No
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「――ああ、そういえば仕事持って帰ってきたんだった」
ふと何気なく思い出した内容をつぶやくと、次に食べるお菓子を選んでいた翠は小さく驚いたようにこちらを向いた。
明るい室内には未だテレビの声が隅々まで響き渡っている。
昼食時に冷蔵庫から出しておいた冷茶をそのままに、二人でテレビ鑑賞を半分しつつ雑談に花を咲かせるというゆったりとした空間に水を差してしまったからだろうか。
「そうなんですか……大変ですね」
ソファから立ち上がって机の上に置いた鞄を取って戻ると、テーブルにノートパソコンを設置して電源を入れる。
型落ち品ではあるが買ったばかりで、黒いボディにはまだ光沢が綺麗に残っていた。
「休日なのに空気が読めないで悪いな。忙しい作業じゃないから翠は気にしないでゆっくりしててくれ」
最新の性能ではないものの、余計なアプリケーション類は一切入れていないのでそれなりの速さは確保している。
通常の画面にたどり着いたらデータ記録媒体をパソコンに差し込み、パスワードを入力してワープロソフトを起動する。
翠はそうした俺の一挙一動をぼんやりと見ているようだった。
「……すみません、ちょっと出てきますね」
そして俺が本格的にキーボードを叩き始めた時、翠は突如立ち上がって一つ礼をし、外出する意を俺に伝えてきたのである。
このタイミングで何故、という気持ちが湧いたが、別段彼女に行動を制限するほど問題がある訳ではない、と独り疑問を沈ませた。
「ああ、いいぞ。気をつけてな」
一時入力を止めて、いつもの表情の翠に手を振る。
すると一言感謝を述べてから、そのまま出て行ってしまった。
俺がしたように、翠にも突然何かを思い出したのかもしれない。
全く、そういう所は昔から俺が変わらないだけでなく、翠も俺に似てきてしまったのだろうかと思うと、どうにも苦笑してしまうのであった。
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