68:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage saga]
2014/03/16(日) 21:12:23.75 ID:h1V5xIz/0
湧き上がる懐古の情と同時に、疑問が心に波紋を広げる。
――じゃあ、今は? と。
仁美(……わたくしはさやかさんのことをどう思っているのでしょう……?)
己への問いかけに答えを探す。
仁美(恋敵となった今でも変わらずに幼なじみで、良き親友で……)
徐々に遠ざかる三人の後ろ姿に、仁美は在りし日の自分たちの姿を重ねてしまったことに
後ろめたさを感じて、それを振り払べくテーブルに視線を戻す。
仁美「――!」
そこにはサンドイッチセットと二つのコーヒーが乗ったトレイが置かれていた。
状況を理解するのと同時に、仁美の斜め上から明るい声が降ってきた。
さやか「おまたせ。いやー結構並んでてさ」
さやか「はいコレ。 飲み物だけでいいの?」
いつの間にか、さやかが席に戻っていたことに面を食らい
差し出されたカップを見つめながら、仁美は固まってしまった。
熱による対流で渦巻くコーヒーから、湯気が立ち上っている。
不意を突かれたことを誤魔化すように、軽く咳払いをしてから仁美はカップを受け取った。
さやか「……?」
さやかは困惑といつもの笑顔を足して二で割ったような表情を浮かべながら
仁美の正面のソファに腰を掛けると、サンドイッチを一口かじった。
カップを持つ仁美の手に、熱が伝わってくる。
仁美(親友……いいえ、違いますわね)
仁美(そして残念ですけれど……たぶんもう、あの頃には戻れないのでしょうね……)
仁美は味のしないコーヒーを含む程度に口にして、それから静かにカップをテーブルに置いた。
沈黙の中で仁美が抱いた感情は、その手に残ったコーヒーの熱とは対照的に
どこまでも冷え切っていた。
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