20: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:31:45.01 ID:HH7rzBHw0
 「コーヒー、美味しいですね」 
  
 少女は口を付けてすぐに目を丸くして驚いている。僕も確かに、この喫茶店のコーヒーを初めて飲んだ時にはあまりの美味しさに驚いた。師匠曰く、『昔は世界中で演奏会を開いてたからさー、各地の農場のおっちゃんが私に惚れ込んで安く良い豆を送ってくれるんだよね』とのことだった。正直に言えば演奏旅行の最中に何しているんだこの人はと思ったけれど、あまりにも美味だったため、思わず師匠の不真面目さに感謝してしまった記憶がある。 
  
 「……んー、本当にこれならば何杯でも飲んでしまいそうです」 
  
 「胃に悪いと思いますよ」 
  
 「そうですね。ご飯は無いのですか?」 
  
 「一応純喫茶を気取っているから、無いと師匠が言っていました。間違いなく、作るのが面倒なだけですが」 
  
 「……仕方ないので、棚に大量に積まれたレコードを再生して、肴代わりにしませんか?」 
  
 「わかりました。リクエストは?」 
  
 「キーシンの演奏ならば何でも」 
  
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