4:>>1
2014/02/08(土) 00:51:42.91 ID:XTCPkHL20
コツ、コツと足音が聞こえてくる。
息を潜め、唾を飲む。数分後、舌打ちが聞こえ、靴音が遠のいていく。どうやらやり過ごせたようだ。
「ハァ……良かった……ッッ――」
安心した途端。腕に痛みが走る。最初の一撃を避けた時に、どうやら腕を擦りむいてしまったようだ。
隣の箱に手を伸ばし、子犬達の様子を見る。身を寄せ合い、オレを見返している。
「ゴメンな、毛布はまだだ……。」
今日二度目の日課を終え、帰ろうとした時、川の向かい側に人影が写る。
「見つけたぞ……。」
さっきの金髪の男だ。そいつの赤い目からは未だに殺気が出ている。
「なっ……。」
その男は歩いてきた。川の上をだ。
「観念しろ。もう逃げ場は無いぞ……。」
「何なんだよ、お前は……!オレはルシファーなんかじゃない!オレの名前は鬼灯だ!!」
「……? まさか貴様……記憶でも消えたのか……?」
記憶が引き継がれていない――さっきから奴の言っていることがさっぱり分からない。
「まぁいい……逆に好都合だ……だが貴様に勇者に殺されるという屈辱を感じさせる事が出来ないと言う事は残念だがなぁ……!」
奴の腕が再度燃え始める。死を覚悟した。そんな時――
「ぐっ……何だ……?」
子犬達が金髪男の脚に噛み付いている。
「お前ら……!!」
「チッ……魔王に従う愚かな生命よ……。」
奴が手を挙げる。腕の焔も大きくなり……まさか……
「まずは貴様らから……!引導を渡してやる――!!」
「やめろぉおおおおおおおおおおおお!!!!」
十年ぶりに、人を殴った気がする。
金髪男は大きく後ろに飛ばされた。
「テメェがオレにどんな恨みを持ってるか知らねぇけどな……こいつらには!!何も関係ないじゃねぇか!!!」
「貴様は……!!」
「[ピーーー]なら、オレだけを殺れよ!!!」
「ならばお望み通り……魂もろとも消し炭にしてくれる!!」
こんなところで死ぬなんて、不幸だな。
でもまぁ、こいつらを守れて、良かったかな……。
そう思って目をつぶる。
「ぐぁっ……!!」
打撃音。しかし、オレの方はなんともない。覚悟を決めたのに何も起きない。痛みもない。恐る恐る目を開けるとそこには――
「……お怪我はありませんか。我が主(あるじ)―― ルシファーよ!」
犬耳とふわふわの尻尾のついた、半裸の白髪の美少女が立っていた。
11Res/13.93 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。