98:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/12(水) 00:12:36.22 ID:rvZEoW38o
美樹さやかの表情は、穏やかだった。
音色に浸るでもなく、演奏に注力するでもなく。
ただ記憶の欠片を拾い集めながら、頭の中のそれを再現している、そんなような感じだった。
そんな彼女を見て何を思うのか、ステージから佐倉杏子が、小さな声で、聞く。
途切れそうなそれは、だけど音に乗って、確かに届く。
「さやか、さ」
「ん。なに?」
「後悔とか、未練とか、ないの?」
「あるよ。そりゃ、たっぷり」
答えながら奏でられた、震えるような高音が、優しいピアノに絡まって、海の中へ残響して消えていく。
未練だらけだと言い放った彼女が生みだした音にしては、それはあまりにも柔らかすぎる。
その表情も、また変わらず、頬笑みをたたえていた。
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