過去ログ - 魔王「人間が我に何用だ」 友「協力したいと思いまして」
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◆smf.0Bn91U
[sage saga]
2014/02/14(金) 01:06:51.26 ID:Fi45EOmq0
「……っ!」
武道家の気迫を込めた声が、観客席で見ているこちらにまで届く。
歓声響くこの闘技場で、さらに大きく距離が離れたこの後ろの席まで聞こえてくるなんてのはあり得ない。
それなのに、聞こえた。
いや、聞こえたと思えてしまうほどの、強い踏み込み。
構えることなく剣を持ったままの友。
開始同時の踏み込みは、正に彼の不意を衝くことに成功していた。
強く、大地を踏み締めて……あたしでもしっかりと見ていなければ避けられないであろう、おそらくはあたし達のように魔物と渡り合えるであろう強く速い一撃を――
――放つよりもさらに速い一撃が、武道家を襲っていた――
「――え」
漏れでた声はあたしのものか。
それとも隣で一緒に観戦していた僧侶のものか。
もしくは……会場全体の気持ちが、音となって支配されたのか。
「…………」
静寂。
先程までの歓声が嘘のよう。
……見えた人は果たして何人いるのか。
友の前で攻撃の予備動作に入ると同時、予備動作無く放たれた剣の一撃が、武道家の脇腹に炸裂した。
それはルール説明の通り、本当の剣ではないのだろう。
武道家は真横へと吹き飛ばされた。
「……………………」
その全てが見えず、状況を理解しようとしている周りを置いてけぼりにしたまま、何事も無かったように剣を担ぎ、友は入場口へと戻っていく。
その背が消える直前になってようやく、勝利宣言が成され……。
友本人が闘技場から消えてからようやく、大地を震わせるほどの歓声が響き渡った。
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