過去ログ - 翠「銀紙に、微かな思いを」
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20:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/02/12(水) 22:25:36.85 ID:slx1J284o


 つまるところ、私は色々な物事に保険をかけてかけて、それこそ何重にもかけたせいで、思考と行動が雁字搦めになっていたのです。

 チョコレートを通じて私の心が止まらなくなるのが怖い。
 私の行動がきっかけで事務所が壊れるのが怖い。
 私の思いが皆さんを裏切るのが怖い。

 そして、そうなることでPさんが嫌な思いをするのが……怖い。

 では、それを防ぐためにはどうすればいいか――それまで即座に帰結していた答えが、何にでもなる不定形へと融解していたのでした。


「……ありすちゃん。もう一度、私の目を見てくれますか?」

 不信という当然を描いていた私と比べると、彼女はどれほど勇敢なことか。
 私だって事務所の皆を信頼していたはずなのに、いつのまにかそうでなくなっていました。

 ですが、彼女は信じて疑わなかったのです。
 これはありすちゃんだから、そう色濃く言えるのでしょう。

 彼女の言葉に突き動かされ、私の意識は急激に冴えてきました。
 本当の私は何をしたいのかという脳裏に隠れていた感情が、瞳に浮き出ているような感じがしたのです。

「――」
 ありすちゃんは、私の言葉を聞いて再び私に顔を近づけてきます。
 歳相応の柔らかな肌がぐっと近づき、真剣な表情で私の瞳を見つめると、ふと表情がほころんだような気がします。

「……どうでしょうか」
 ぽふ、とソファに勢い良く座り込むありすちゃんは、どこか楽しそうにも思えます。
 まるで思い通りに事が運んだ軍師のよう。

「聞かなくても、わかりますよね?」


 つまりそういうこと、らしいです。





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