15:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/02(日) 20:44:12.72 ID:bEFC5GTXo
「合唱部なら色々と学ぶこともあるかと思ったんですけど、あの調子ですから」
先生は目を細めた。あの調子、を想像しているのかもしれない。
「ここで練習、しても構わないですよね?」
「ああ、それは問題ないと思うよ。多分。旧校舎だから人も少ないし」
私たちの学校の新校舎は主に生徒が使っている。大抵の部活も新校舎で行われている。
旧校舎で授業だけで使う教室、職員室、事務室等が設置されていて、名前だけの部活の活動場所もこっちだった。
放課後は人が少なくて本当に静かだった。だから、考えてみれば職員室に声が筒抜けるのは当たり前で、
ともすればこの話し声だって聞こえてるかもしれなかった。
チャイムが鳴り、旧校舎の静けさを揺らした。
残響が消えるのを待ってから先生は訊いた。
「如月は、何のために歌を練習するんだ?」
何のために。少し考えて、私は首を捻った。
「自分でもよく分からないんです」
先生はちょっと驚いたような顔をした後、にこりと笑った。彼は彼で何て言えばいいか分からなかったのだろうか。
「……じゃ、またな」
「はい、さようなら」
校舎を出た後、私はふと気が付いた。またな、に、素直に"はい"と言って、別れの挨拶をしたのだった。
「珍しい」
独り零して、また夕方を泳ぐ。
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