過去ログ - 少女「のんべんだらりと」
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2:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga sage]
2014/03/10(月) 09:44:30.65 ID:ZI/zw+4DO
 幌馬車が村を出る。
 わたしは家族が見えなくなるまで手を振り続けた。
 やがて村が見えなくなると、幌馬車の中にいた屈強な身体の大男が立ち上がり、幌馬車の後ろの出入口を塞いだ。
 奴隷たちを逃がさないためだ。

 わたしは全部知っていた。

 魔族との戦争は終わった。勇者はもういない。
 王都は遠く離れていて、今から行く町に王様や王女様がいるわけもない。
 わたしは売られたのだ。お父さんとお母さんに。
 でも、仕方ない。
 村は貧しい。連日食べる物に困るくらいに貧しい。
 誰かを切り捨てなければ餓死するしかないなら、働ける兄姉より足手まといな末娘を切り捨てるというのも理にかなっている。
 ただ、だけど……

 わたしは幌馬車の中を見渡す。
 嬉しそうに鼻歌を鳴らす男の子、無言の少女、しゃくりあげて泣いてる子。
 自分と同じように売られた子が、たくさんいた。
 そのまま首を回して幌馬車の外、見えないと分かっていて村の方を見ようとするが、大男に怒鳴られて顔を逸らした。
 でも、こっそりとわたしは横目で幌馬車の外を見続けた。
 もしかしたら、父が、母が、走って追い縋って来てくれるかもしれない。
 あり得ないと理性で分かっていても、ずっと外を見続けた。
 そんな淡い期待に縋らないと、大声で泣き出してしまいそうだったから。


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