172:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/28(月) 18:34:00.08 ID:S3TlNWjd0
まゆと同様の愛を持っていて、だけどアイドルや仲間との良好な関係性を捨てる気もさらさらなかった。
どちらかを捨てず、どちらも取る。全部取る。
彼女はそれを成す覚悟も、頭脳も、ポテンシャルも、全部を手に揃えていた。
天性の驚異的な立ち回り。それが、それを持ってしまった為に、なまじ出来てしまった為に。
最後に必要な、そして一番重要な、『男に選ばれる』、それだけが、みくの掌から零れ落ちていた為に。
みくは、深く、深く、ずぶずぶと泥沼に足を突っ込んでしまっていたのだ。
「猫は、過去を振り向かない」
一つそう呟く。
彼女に残された、唯一の自衛手段。
そんなことはなかった。辛い過去など何もなかった。
それでいい。そうしなければならない。
忘れよう、忘れなきゃ、駄目なのだ。
過去は忘れて、しかし、それでも悲しみは消えない。暗い沼は彼女の足元に這い寄っている。
泥沼。だけどそれでもいい。そこにあったしても尚、彼女は踊れていた。踊ることが出来てしまっていた。
うじうじして、泥沼を誰かに見せる、それはもう前川みくじゃない。
――自分は、曲げない。
これが、彼女なのだ。一度そう決めたのだ。
『そんなことはなかった』
だから、みくはそうしている。
踊れるから、踊り続ける。悲しみの中で。苦しみの元に。
やろうと思えば、みくはいくらでも、男とちひろの仲を邪魔することが出来た。
彼女の立ち回りならば、猫のように軽い飄々とした渡り方ならば、二人の関係を壊すことは、出来なくもなかった。
198Res/148.15 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。