171:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/28(月) 18:33:31.18 ID:S3TlNWjd0
誰にも、恐らくあの男やちひろでさえも、それに気づいて居はないのだろう。気配の隠蔽は完璧だった。
若干のボロを出してはしまったが、それに気づけた幸子は今他にやることがあり、その他の皆は、寝ている。
誰にも、猫の尻尾はつかめない。
少女たちはみくと同じ様に男を懸想していたが、その想いはそれぞれ異なる。
智絵里は、漠然と彼を好いていた。
確かに『愛』の一つではあったが、それは極めて純度が高い、初々しい恋心だった。彼女の消極性が良くも悪くも作用していた。
――何れにしても、傷は浅い。
しかし、それを差し引いてもなお、彼女の立ち直りは早かった。
幸子は、自分を肯定したくれたからこそ、彼を愛していた。
ある意味での鏡だったのだ。自分をカワイイといってくれる男が好き。
絶対的な自信を持つが故の、ナルシズム。無論、それだけのものではないが、スタートはそこだった。
――だからこそ、彼女はそれを断ち切りに行ったのだ。
まゆは、べったりと深い愛だった。
天秤があったとする。まゆは、その片方に愛を全力で重ねることが出来る女だった。
他に何もいらず、一方だけあれば満足。アイドルを捨てることになったとしても、片方があれば、それでいい。そんな捨て身の愛を持っていた。
――だけど、まゆは隙を作ってしまった。
事務所で笑いあい、切磋琢磨し、愛を抱く少女としてだけではなく、煌くアイドルとして過ごした日々で、まゆは明確に変化していた。
それでも、もし、彼がまゆに愛を囁いた場合、彼女は躊躇わずにアイドルを捨てることが出来るだろう。
だけど、心にどこか『しこり』が生まれる。それぐらいには、彼女は確かに変わっていた。
だからこそ、男を愛する、と言う天秤の片方がなくなっても、そのしこりが、『アイドル』が彼女には残っていた。
そして仲間の存在が、まゆを支えていた。
だからこそ、まゆは自棄になることも間違った選択をとることもなかった。
仲間・ライバル・友達。共に高みを目指すと、決めることが出来た。
みくは、そのどれでもなかった。
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