175:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/28(月) 18:35:25.24 ID:S3TlNWjd0
リーダー格である少女は、変わりなくいつもの彼女だった。
いつも眠そうな少女は、それでもきちんと、全てを大切に思っていた。
件の女と男は、どうしようもなく互いを求めていて、だからこその突然の懐妊だった。
気弱な少女は、誰の手も借りず、自力で立ち上がり、煌く世界に上り始めた。
男に深い愛を抱いていた少女は、だけど未来をその男の為じゃなく、自分の為に使うと決めた。
ナルシズム溢れる少女は、ただ正々堂々と、真っ直ぐ――結果は解かりきっているのに――想いを伝えに行った。
じゃあ、自分は?
自分は、何時まで止まっていればいい?
いつまで、『飄々とした前川みく』でいればいいのだ?
流れる涙は、彼女の心がもがき苦しむ中で発せられた、危険信号だったのかもしれない。
「っ、く……ふっ、うっ、うっ……」
如何に彼女が上手な立ち回りを見せていたとしても。
心の泥沼で、まだ舞える精神を持っていたとしても。
だけど、みくは十五歳の少女だった。
失恋に咽び泣き、立ち止まる自分に絶望する、普通の女の子なのだ。
ここが、みくの分水嶺だった。
もしここで、彼女が独りで涙を流していたら。
明日のみくは、だけど何時もどおりのみくで。
そのまた次のみくも、普段のみくだ。
――今日の涙を流したみくは、ここで殺されてしまう。
この時点で、誰かがみくに気づかなければ、やっと弱さを出したみくは、ここで封殺されてしまう。
そうしてまた、極めていつものみくが、また飄々とにゃあにゃあ鳴くのだ――心奥に、深い悲しみを抱えながら。
だけど結果、そうはならなかった。
『彼女』はそれを見逃さなかった。
幸子ではなく、よりによって一番弱さを見せてはいけない『彼女』の間合いで、みくは尻尾を振ってしまったのだ。
この距離は、彼女の距離だ。
零距離、掴む。
「みくちゃん」
「っ!」
顔を伏せ声を押し殺し鳴いていたみくに、ふわりと声が掛けられる。
いつの間にやら、みくのすぐ隣に卯月が来ていた。
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