20:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga sage]
2014/03/21(金) 01:38:04.17 ID:3uWdORZI0
歩いてきたのは喜びの地
相も変らぬ様子で人々の顔は幸せであふれかえっている
歌う少女の前に立って掲げたのは、時代に忘れられたテープレコーダー
カチッという音とともに、彼女の歌を収め始めた
―――
――
―
ひとしきり、彼女が歌っているのを聞いて、彼女にそれを手渡した
千早「なんでしょうか?」
これを聞いてほしいんだ、自分が生きてきた中で一番幸せになれる歌が詰まってる
彼女にイヤホンとをつないだレコーダーを渡して、再生した
少女は黙って、聞いていた…その顔は、歌うときと同じ喜びに満ちていた
―道行く人々の笑顔は消えていた
子供は泣き叫び、大人たちはどうしていいか分からずに戸惑っている
この人たちは、知らなかったんだ
耳に入ってくるいつもの音楽は、彼女によって奏でられていることに
この人たちは、知らなかったんだ
子供のころの子守唄は、彼女の口から歌われていることに
この人たちは、知らずに大人になったんだ
誰もが子守唄を聞きながら育ち、ずっと子供だったんだ
少女は歌うことをやめた
その耳には喜びが満ちている
人が一人、また一人と、少女の周りに囲いを作った
歌ってくれ、歌声を聞かせてくれとせがむその姿は
駄々を捏ねる子供そのものだった
少女の耳から音楽が止まった時、少女は再び歌い始めた
人々の声に応えるかのように、その声を待っていたかのように
歌が終わると聞こえたのは、手をたたく音
ひとつ、また一つと、強まる拍手は豪雨のように
―――
――
―
千早「ありがとうございました」
人々に言ったはずの言葉は、自分に投げかけられているようだった
千早「私は、歌を聴くことが好きです、でも歌を聴いてもらうことも好きです」
千早「だから私は歌い続けます、こんなに嬉しい気持ちになれたのは初めてです」
少女は歌う、人々の喜びを祈りながら
人々は賛美を謳う、少女の喜びを祈りながら
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