19:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga sage]
2014/03/21(金) 01:11:38.88 ID:3uWdORZI0
歩いてきたのは探求の地
せっせと掘り進める手を止めず、なおも少女は掘り続けていた
こちらに気づいたけれども、今度は顔さえ向けず
雪歩「旅人さん、こんにちは」
ざくざく聞こえる律動は、とても聞き心地がよかった
だけど、それを止めなくちゃいけない
倉庫に眠ったままだった、職人が忘れた花火と筒を用意して
さぁ、パレードを始めよう
雪歩「……」ザクザクザクザク
ヒューーー ドーーーン
雪歩「え?」ヒョコ
出てきた少女の目に映された景色は、空一面に咲き誇る花々
きっと少女は逃げることが得意になっていた
きっと少女は逃げることに言い訳が欲しかった
高い所に成った葡萄を欲するキツネ
その手は届かず、知らぬうちに酸っぱいものだと決めつけていた
そんな少女に必要なのはその地の絶望
その花は、たったこれっぽっちの命だけれど
一瞬だけでも、十分すぎるほどに感動を分けてくれる
地面を幾ら掘ったところで、こんなに美しい花は見つけられまい
雪歩「…すごいですね。今まで散々掘ってきましたけど、こんなに容易く感動することはありませんでした」
じっと花火を見つめる少女は、くたびれたスコップを地面に置いた
―――
――
―
二人並んで手持ち花火に火をつけた
パチパチと鳴る音は、律動的ではなくてとても不安定で
それでもなぜか耳に入れば気持ちがいい
雪歩「ありがとうございます」
ぼんやり花火を見る少女が、消え入りそうな声を出した
雪歩「私、逃げてました…だって地上は怖いものばかりだから」
雪歩「地面の下はきっと、素敵なものがたくさんあって、掘っても掘っても飽きることはないって」
雪歩「でももう大丈夫ですぅ」
少女は今まで見せたことのない笑みを浮かべた
雪歩「この地の全ての楽しさを探求できる勇気が持てましたから」
この顔に浮かんだ笑顔は、一瞬で消えることはないだろう
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