22:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga sage]
2014/03/21(金) 03:35:53.39 ID:3uWdORZI0
歩いてきたのは安堵の地
木のドアを開け、ドアにかけられたベルが彼女を呼んだ
律子「またいらしたんですね、いらっしゃいませ旅人殿」
自分が少し前にあげた、時計は顕在していたようだった
だけど、そんなガラクタとも今日限りでおさらばしよう
骨董品屋で最後まで売れ残って、埃かぶって置き去りにされた柱時計
今となっては、動くのは振り子だけ
律子「2分10秒……お待たせいたしました」
彼女の持ったその時計を、無理やり奪ってみせた
律子「な、何するんですか!」
その代わりと言うわけで、彼女にその柱時計を見せた
律子「代わりの、時計ですか?」
今度はそれを使ってほしい、勝手は悪いけどきっとこの子の為に働いてくれる
律子「持ち歩けないから、一々時間を確認しなくちゃなりませんね」
悪態ついて、彼女は律儀にそれに従ってくれた
―――
――
―
律子「わからない…わからない…!」
時計が動かず焦る少女、それに合わせて焦る客
少女が急げば客も急ぎ、客が寝るころに少女も床に就く
こんなところで安らぎを得られるはずがない
壊れた時計は振り子を無闇に振り続けた
少女は時間で動いていた、少女は時間に動かされていた
時計は止まった、少女も止まった
肩を叩いて、客の方を指差した
律子「時間も分からないのにどうしたら…っ」
客人は、気にしなくていいから案内してくれと
律子「…いらっしゃいませ、お待たせいたしました」
自分で動くことがここまで大変なものなのかと思えるほどに
少女は時計で廻っていた、時計は少女で廻っていた
壊れた時計の秒針が、ひとりでに動き出した
律子「いらっしゃいませ、少々お待ちくださいませ」
もう大丈夫、彼女は自分の時を刻み始めたから
もう大丈夫、その時計の振子も止まっているのだから
彼女も客もこれで本当に安堵できたんだ
律子「ありがとうございました」
宿を出るとき背中にかけられた
感謝の言葉が、全てを語っていたのだから
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