58: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/04/17(木) 22:12:22.78 ID:HamqrAcGo
さやかは嬉しそうに笑っていた。
その笑みは、病室でこれまで何度も恭介が見てきた笑みと一味違って見えた。
彼は思いがけなく赤面してしまう。
不思議な気持ちだった。
一秒でも早く一人になりたくて、この状態で彼女と顔を見合わせたくなくて、
さやかの方を再度見たりしないよう気を配りつつ恭介が急ぎ病室を出ていく。
さやかただ一人が残された部屋。
機械から流れる優しいヴァイオリンの演奏が、邪魔にならない程度の穏やかな大きさで部屋を満たしている。
ここではない場所、今ではない過去において恭介の手によって奏でられた音。
さやかが白いベッドの上で上半身を起こし、それに耳をそばだてていた。
そしてその視線は、何もない壁をにこやかに見つめていた。
終わり
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