11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/15(火) 05:45:31.17 ID:fX5a1w8N0
堤良樹(男子10番)は違和感を感じて目を開けた。
壁を見ると、この部屋には1つも窓がついていない。
周りを見ると、クラス全員がパイプ椅子に腰掛け、机に寄りかかって寝ている。
良樹の前には、男子委員長の高橋良太(男子9番)、右隣は大人しい感じの徳永礼子(女子11番)、左隣はいつも暗い国本弘美(女子4番)…この並び方は、出席番号順、テストとかの時の並び方だ。
あれ…? 今日ってテスト…?
少し考え、目を見開いた。
おかしい、テストのはずがない。
なぜなら、今日まで修学旅行だったのだから。
慌てて立ち上がり、右斜め前で眠っている幼馴染の土井雫(女子10番)の肩を揺すった。
「雫! 雫! 起きろ!!」
雫はゆっくり顔をあげ、眠たそうに目を擦った。
「あ…れ? 良樹君…? どうしたの…?」
「おかしい!ここはどこなんだ!?」
良樹は辺りを見回す雫の首を見た。何かがついている。
自分の首を確かめると、やはりついていた。首輪が。
金属製のそれは、あるとわかると重苦しく感じる。
こんな物はつけた記憶がないし、こういう趣味もない。
なんだ…?なんなんだ…?
すると、部屋の前方のドアがガラッと開き、男が4人入ってきた。
桃印の記章がついている、政府の人間だ。 一人は筋肉質で、Tシャツにジャージ。 残りの3人は軍人のようだった。 3人とも弱そうだったけど。 軍人じゃない男の方がよっぽど強そうだ。
軍人の弱体化、これからは役人も筋トレをかかさずに、何かのキャッチフレーズみたいだな。とにかく、筋肉質の男に睨まれたので、良樹は席についた。
「さーあ、みんなぁ! おはよう! 起きたまえ!!」
筋肉質の男は教室を見回し、手をパンパン叩きながら叫んだ。 その声で全員が目を覚ました。 当たり前だ。 鼓膜が破れそうなほど大きい声だったのだから。やがて教室がざわつき始めた。
「あれ?なんで寝てたんだ?」
「ここどこなの?」
「あのマッチョだれだ?」
あちらこちらから声が聞こえた。
「みんな、静かに、静かにー!」
筋肉質の男が再び叫んだ。 部屋は一気に静かになった。その様子を見て、男は爽やかに笑った。 どうでもいいことだが、歯が白かった。 役人も歯が命。
「えー…、オレは今日から君達の担任となりました、名前は進藤幹也!
幹也先生と呼んでくれたまえ!
ちなみにこっちのモヤシのような軍団は、先生の補佐だ!
皆から見た左から順番に、田中、足立、西尾だー!
よろしくな!」
進藤は親指をぐっと立て、笑った。
…担任?担任って…?
「これはどういうことですか!? 担任って…」
女子委員長の津川麻保(女子9番)が立ち上がった。いつものはっきりとした口調だった。進藤が「あっ」と言った。
「そうだ、大事なことを言ってなかったな! 先生どーも何か抜けてるんだ、ごめんな。 えー…このクラスは、今年のプログラム対象クラスに選ばれたぞ!
ちゃんとご両親にも伝えておいたからな! 安心したまえ!」
誰かが「うっ…」と呻いた。
何が安心したまえ、だ。安心できるわけがない。プログラム、正式名称、戦闘実験第六十八番プログラム。全国の中学校から任意に選出した三年生の学級内で、生徒同士を戦わせ、生き残った一人のみが、家に帰ることができる、わが大東亜共和国専守防衛陸軍が防衛上の必要から行っている戦闘シミュレーション。この国の、中3なら誰もが知っていて、誰もが恐れているものだ。それが…オレら…? マジかよ…良樹は相変わらず爽やかな笑みを浮かべている進藤を睨みつけた。
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