219: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/29(火) 17:14:55.40 ID:5HLYTs2y0
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気分は最高。空は晴れやか。なんて幸せな日だろう。思わず顔がにんまりにやけちゃう。
あたしはスポーツ用品店の店長さんにお礼をして、店を後にした。お礼は当然直角のお辞儀。
アーケードには結構人がいた。寂れてるところも全国的には少なくないってこないだニュースでやっていたけど、わが町はまだまだ大丈夫なようだ。
あたしみたいなジャージを着た人もたくさんいる。近くの高校や中学校、あたしの母校。
部活は休みでも体操服を着てれば体を動かしたくなってくる。グラウンドは他の部活が使っているから駄目だけど、河川敷でも公園でも、どこでも体は動かせる。新しい靴の履き心地も、もっと味わってたいし?
一人は結構苦じゃないタイプなのだ。外周を走ってるだけでも楽しくなれちゃう。体を動かすということ自体が楽しくて、なんだか自然と笑顔になってくるんだよね。
友達は気楽でいいなぁなんて言うけど、まさにその通りだと自分でも思う。特に考えることはなく、風の向くまま気の向くまま、体が動きたいように動くのがあたし流。
やっぱり体を動かそうかな。そう思って踵を返せば見知った顔があった。
「花園ちゃん、おはよう」
「あ、おはよう!」
隣に背の高い男の人。彼氏……とは思わない。この人がいつも話に聞く、花園ちゃんがべったりのお兄さんなのだろう。
二人は仲良く? 手を繋いでいた。ペアルックではないけど、花園ちゃんはツインリングのネックレスを、お兄さんは同じデザインの指輪をしていた。
「初めまして、あたし、花園ちゃんのクラスメイトの」
お兄さんに向かって挨拶を「物部っち?」
花園ちゃんがこっちを見ている。眼に光がない。
手がそっと差し込まれた鞄の中には何が入っているんだろう。
「そういうの、いいから」
にこやかを装って花園ちゃんが言う。どうして装っているかがわかるのかって……だって、口角が引き攣ってるし、こめかくがひくひくしてるし……。
この話題はタブーだな。あたしは愛想笑いをしながら、駆け足でその場を後にした。
こういう運動は、あんまり気持ちのいいものじゃないなぁ。
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