過去ログ - モバP「見えた今に絶えぬ未来を」
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18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 23:09:41.19 ID:dbLyof+Po
「全く……心臓が止まるかと思ったぞ」
「あ、あはは……すみません」
ちり、とペットボトルのラベルを鳴らしつつ翠は苦笑した。
トレーニングウェアを着たまま寝るぐらいであればものぐさな人間ならあり得ない話ではないが、それが翠の場合は色々と納得はいくまい。
まず彼女ほどの良識ある人物は汗をかいて汚れた服のまま寝ることはないし、そもそもレッスンルームの中心で一人眠るというのはありえないと言っても過言ではないのだ。
それだけに、この状況があらゆる意味で不可解なのであった。
「しかし、一体なんで寝てたんだ?」
スーツのままいささか傷の入ったフローリングの床に座る。あまり使用頻度が高くないレッスンルームとはいえ、何十人も抱えるプロダクションの物とあってはそれなりに綺麗だとは言えない。
だからこそ汚れた床に嬉しさを覚えるのだが、残念ながらここはレッスンのための床であり寝床ではない。
「……ええと」
俺の質問に翠は視線を他所に向け、あるはずの答えを言い淀んだ。
そして先程まで漂わせていた笑顔がゆるやかに霧散していった。
その様子を見て、俺は一つ思考を挟む。
一つだけはっきりとわかるのは、答えに窮するのは決して彼女が忘れやすい性格なのではないということだ。
この状況で寝るという異常性、そして今の体の状態を理解している翠なら、記憶から過去が多少抜け落ちていても推察で導くことはできよう。
それができないというのだから、彼女なりの言い出せない原因というものがあるはずである。
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