過去ログ - モバP「見えた今に絶えぬ未来を」
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22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 23:16:39.41 ID:dbLyof+Po


 ――ハッとして顔を上げると、翠が困惑した顔で手を意中無く伸ばしながら俺を見ていた。
 人のノートを偶然とは言え見てしまったことを謝罪しようと最初は思ったが、それ以上に記された文字に意識が全て注ぎ込まれてしまう。

 そしてその文章は、俺の脳みそを加熱させるのに十分なものであった。


 『午前九時、練習。柔軟を強めに。ターンで足が上がらないから下半身を重点的に』

「今日、俺と話したのは何時だ?」
「……Pさんが事務所に来た時です」
 苦虫を噛み潰したような表情で、翠が答える。

 『午後〇時、各シーンのステップを重点的に。他の人に比べて足さばきが遅すぎる』

「今日、昼ごはんは何を食べた?」
「……いえ、特には」
 まっすぐと見つめる俺の視線に耐えかねて、彼女は俯いた。

 『午後七時、第三〜五のダンスを反復。結局披露するときは一人なのだから、頑張るしかない』

「今日、俺以外と誰に会った?」
「……千秋、さんです」
 俺の質問に答える度、彼女の声が萎んでいく。
 声が薄く、脆く……震えるように緩んでいく。

 『午後九時、まだ』

「……今日、いつからここに居る?」
 四度目の質問に、少し待っても翠の返事はなかった。

 ページをめくっていくと文字はここで途切れていたが、状況と状態を理解するのにこれ以上の情報は必要ない。

 彼女は、水野翠は――。

「……ずっと、です」

 ようやくでてきた答えに、痛みを封じ込んで喉を切り裂いて声を出した。





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