過去ログ - あずさ「Short Hair」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:28:57.24 ID:K2Nf9gx50



「あずささん。俺、律子と結婚することにしたんです」





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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/04/25(金) 02:29:32.63 ID:K2Nf9gx50

 事務所を出るときに言われたその一言は、私には少し重すぎました。

「わぁ、おめでとうございますっ」

以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:30:07.10 ID:K2Nf9gx50

「……わか、りました。では、また明日」

「はい。また明日」

以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:30:42.92 ID:K2Nf9gx50

 顔を上げると、ビルの隙間から夕焼け空が見えました。
 街を行き交う人の流れは、立ち止まって身体を屈めかけている私を避けるようで。

「結婚、かあ」
以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:31:12.10 ID:K2Nf9gx50

 ――

 涼しい風が事務所を通り抜けていた、あの夕方。
 私はずっと胸に秘めていた想いを、誰にも知られないようにしていた感情を、プロデューサーさんに伝えました。
以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:31:41.67 ID:K2Nf9gx50

「すみません」

「えっ……?」

以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:32:14.18 ID:K2Nf9gx50

「すみません……だから、あずささんの気持ちには応えられないです」

 こんなに優しい人ですから、誰かに好かれていて当然なのに。
 それでも私は、この人は運命の人だっていう確証もない女の勘なんかに頼りきりで。
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:32:43.50 ID:K2Nf9gx50

「……あず」

「もし悩みがあったり、結婚の報告があったら……私に教えて下さいね?」

以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:33:11.50 ID:K2Nf9gx50

 ――

 スマートフォンを取り出して、彼の写真を出してみます。
 事務所のみんなで写った集合写真、彼と、その隣の律子さんを拡大して。
以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:33:38.75 ID:K2Nf9gx50

「律子さん、だったのね」

 言われてみれば、そうだったような。
 気づかせるためのパズルのピースはたくさん散らばっていたようにも思えました。
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:34:17.21 ID:K2Nf9gx50

 律子さんはやっぱり、同じプロデューサーという立場だから。
 プロデューサーさんも惹かれたのかもしれません。

 また駅に向かって歩き出そうとした時に、プロデューサーさんを振り切って事務所を出たことを思い出しました。
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:34:59.56 ID:K2Nf9gx50

 それに、恋愛相談に乗るといったのは私で。
 相手が律子さんだと分からなくても、分かったとしても、ちゃんと聞かなきゃいけなかったのに。

 後悔が少しずつ、新雪のように心に積もっていきます。
以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:35:26.43 ID:K2Nf9gx50

 プロデューサーさんから、1通のメールが来ていました。

「『あずささん、突然報告してしまいすみません』……?」

以下略



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:36:00.34 ID:K2Nf9gx50

「プロデューサーさん、お茶目だなぁ」

 私はプロデューサーさんのことだけを考えていたけれど、あの人は私よりずっと大人でした。
 あなたの瞳にはもう、律子さんしか映っていないんですね。
以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:36:29.73 ID:K2Nf9gx50

 少しだけ、まだ少しだけ。
 結婚すると聞いても、ほんのちょっぴりの心の空白が『チャンスはある』と侵食していきました。

 でも、こんなプロデューサーさんを見てしまえば、奪うなんてことが出来るはずもないと分かります。
以下略



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:36:57.28 ID:K2Nf9gx50

 何気なく思いついたことがあって、私は駅の方向に再び歩き始めました。
 長い髪の間を冷たい風が通り抜けていくこの感覚は、アイドルを始めてからずっと存在していたもの。

 なら、今までのプロデューサーさんへの恋心と一緒に。
以下略



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:37:25.45 ID:K2Nf9gx50

 ◆

「おはようございますっ」

以下略



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:37:52.59 ID:K2Nf9gx50

「お似合いですけど……どうしていきなり?」

「ほら、律子さんが今度から私をプロデュースしてくれるんですよね?」

以下略



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:38:23.36 ID:K2Nf9gx50

 本当の理由は、多分誰にも言えないと思います。でも。

 失恋をした女は、髪を切る生き物でしょう?
 ――きっと誰も彼も、そうやって新たな道を見始めるのかもしれません。
以下略



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:39:29.80 ID:K2Nf9gx50

 誰も傷つかない世界で、誰かが傷つか無くてはならないのなら。
 私はきっと、身を差し出します。

 昔から自分に根付いている自己犠牲の精神。今更考えることを変えられるとは思いません。
以下略



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/25(金) 02:40:52.08 ID:K2Nf9gx50

 Base Ball Bearの「short hair」の雰囲気を見たかったので書きました。
 お読みいただき、ありがとうございました。お疲れ様でした。



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