20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/04/25(金) 21:33:22.74 ID:6I5S2gV60
「じゃあ簡潔に話すよ。
篝獅子は本来、『谷を登ってきた』人間に対し力を与え、その人間を権力者や能力の突出した人間に仕立てる。
歴代の偉人には篝獅子が取り憑いていた、なんて逸話もあるくらい。
でも水瀬のお姉ちゃんはまだ若いゆえに神の力を持て余して正気を失っているのか、もしくはこの国では獅子の怪異譚が普遍的でないから上手く篝獅子の力が働かないのかもね」
お姉ちゃんは両方だって言ってたけど、身に余る力を与えるなんて迷惑な怪異だよね、と他人事のように言い放つ斧乃木ちゃん。
他人事なのは確かだがその渦中に身を置く者の言葉とは思えない。
それよりも――水瀬は、そんな身に余る力を与えられる程の事を、その齢で成し遂げたのか。
「惚れ直したぜ、水瀬……!」
「現状を治めるには水瀬のお姉ちゃんを『説得』すればいい。方法はふたつ――」
「うがあああああぁぁぁぁ!!」
と、水瀬の唸り声共に上から鉄柱が数本降ってくる。
洒落になっていない。
「『例外のほうが多い規則(アンリミテッド・ルールブック)』――――姑息版」
「うご!?」
斧乃木ちゃんはアクセルひと踏みで300キロのロケットスタートのようにその場から『発射』すると僕にタックルを決める。
慣性の法則で後方に滑りながら、器用にも僕の腰を抱き方向転換を成功させる斧乃木ちゃん。
僕の扱いが前よりもぞんざいな気がするが、助けてもらっている以上は文句は言えまい。
「い、いつつ……」
「ひとつ、神の力をもってしても敵わないと思い知らせる、力づくによる説得」
「それは無理そうだな……」
「そうだね、今の彼女に匹敵するとしたら全盛期の忍様くらいだろうから」
様付けしてるし……。どれだけ忍コンプレックスが進んでるんだ……。
とは言えこの場で忍に血を吸わせるのも難しそうだし、何よりなるべく吸血鬼化は避けたい。
また鏡に映らなくなるほど吸血鬼化が進んでしまったら、今度こそ戻れなくなる。
喋っている間にも水瀬の方からはあらゆる重量物が投擲されてくる。
段ボール、ステンレス棚、廃材、工具、机、コンテナ。
投げてくるものに法則性がないところを見ると、どうやら手当たり次第にぶん投げているらしい。
僕と斧乃木ちゃんはそれらを避け、あるいは弾きながら少しでも安全な場所へと移動する。
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