過去ログ - 阿良々木暦「りつこドラゴン」
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11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/04/30(水) 20:01:39.76 ID:Jt/5r6cB0

「あ……」

その時、視界がジャックされノイズが走る。

歪み始める世界を前に目を閉じるがもう遅い。

駄目だ。

やめて。

私は、『読みたくなんてない』――。

「う……っ!」

私の意思と反して『私の瞳が分割される』。

二つの眼球がそれぞれ分かれ四つに。八つに。十六、三十二、六十四、百二十八、二百五十六、五百十二、千二十四、二千四十八、四千九十六、八千百九十二、一万六千三百八十四、三万二千七百六十八、六万五千五百三十六、十三万千七十二、二十六万二千百四十四、五十二万四千二百八十八――――。

階乗に増えて行くそれは瞬く間に数億の複眼と化し、羽川さんを『視た』。

あれは――――。

「猫……と、虎……?」

「え……?」

羽川さんの背景に写るのは、白い猫と燃える虎だった。

さっきもちらりと見えたのだが、こんなのは初めてだ。
いつもならば、他人の表層意識とでも言うべきものが覗ける。

そう。
私は、『時々、人の心が読めてしまうのだ』。

それは、プロデューサーと出会うよりも昔のこと。
いつからこうなったのか、明確な時期は覚えていない。
けれど、まるでオープンチャンネルのように他人の考えが、思考が、思惑が、思念が、恣意が、無作法にも私の頭に流れ込んでくる。

――見たくもないものまで。
もう、本当に何なのだろうこれは。
そう、まるで。

「「怪異……」」

私と羽川さんの声が重なり、二人はきょとんとした表情を、鏡合わせのように見合うのだった。



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