過去ログ - 【モバマス】「きみがいたから」【結城晴】
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17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/03(土) 21:11:17.53 ID:3dnvgWSh0
 ふたり取り残されて、しん、と静まり返る楽屋は、なんだか居心地が悪ぃよ。

「最近、雪美は学校でのことをすごく楽しそうに話してくれますの。それもぜんぶ、結城さんのおかげですわ。雪美に代わって、感謝申し上げますの」

「別に、あんたにお礼を言われるようなことじゃねぇよ」

 櫻井は気分を害した風もなく、逆になんだかおかしそうに笑う。

「まあ、そうですわね。雪美といると、さほど年が違うわけでもありませんのに、保護者目線になってしまって困りますわ。時たま、そんな気分になりませんこと?」

 思いっきり図星で、何も言えなくなったオレを見て、櫻井は肩をすくめてたよ。

「結城さんは今、六年生だとお聞きしましたけれど」

「そうだよ。それが?」

「今年で卒業というわけですわね」

 急に櫻井が真剣な顔つきになって、オレをじっと見つめてきた。

「ご存知かどうか分かりませんけれど、ごく最近まで、雪美はアイドル活動を辞めてましたの。今みたいに笑うことなんて、考えられないほどでしたわ」

「詳しくは知らねぇけど、多少は聞いてる。飼い猫を亡くしたんだろ?」

 つうかさ、なんで今、そんな話、するんだよ。

 もうどうにもならねぇことをさ、掘り返したって、仕方ねぇだろ。

「雪美はペロちゃんの死に目に立ち会えなかったんですの」

 息が詰まった。

「ペロちゃんとお別れできなかったことが、いちばんに雪美を苦しめましたわ」

 冷たくなった飼い猫を見下ろす佐城の姿が、頭の中に浮かんで、心が痛んだ。

「春が来れば、結城さんは学校を卒業しますわ。雪美は悲しむでしょうけれど……そればっかりはもう、どうしたって仕方のないことですわ」

 櫻井は静かに歩み寄ってきて、祈るみたいに、オレの手を握り締めた。

「だから、せめて、今度はちゃんとお別れをしてあげてほしいんですの。身勝手なお願いだって分かっていますけれど、どうか、黙って雪美の前からいなくならないで。あの子がお別れを受け入れられるように、さよならを告げてあげてください」


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