過去ログ - ことり「雉も鳴かずば撃たれまい」
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2014/05/04(日) 00:15:48.10 ID:Q/bzk47d0
手を繋いで、凛と海未は街灯が目覚め始めた街を歩いた。
会話の無いまま、まっすぐ歩いた。風が少しずつ、二人の耳を冷やした。
凛は海未を元気づけるための言葉を探していた。
しかし頭の中にあるのは陳腐な拙い言葉ばかりで、海未に響くとは到底思えなかった。
ならば頭の外には何か役に立ちそうなものは無いかと探した。
くたびれた植木。小料理屋の暖簾。美容院の看板。電線の烏。
そしてふと目をやった西の空、橙と紫の間に眩い星が輝いているのを凛は見つけた。
『せっかくいい名前なんだから、星のことも好きになってあげてね』
凛は希の言葉を思い出した。
それはきっと、この時のためだったのだ。
「ねぇ海未ちゃん。一番星って、どんな星だか知ってる?」
「……金星、ですね」
「おー、詳しいにゃー」
「……一年生の理科で、最初の方にやるはずですよ。まさか覚えていないんですか?」
「あれ、そうだったかにゃ?」
「まったくもう……穂乃果じゃないんです、から」
海未は言い淀んだ。凛が顔を向けると、彼女は顔を背けた。
不用意に傷を広げてしまったかもしれない。しかしここで止まっては傷を広げたままだ。
思っていることはなんとかして最後まで伝えなければ。
「ねぇ海未ちゃん。金星にはどういう意味があるか知ってる?」
「…………いえ、そこまでは」
「じゃあ教えてあげるにゃ。金星はね、『美』と『愛』、それと『女性らしさ』の象徴なの」
海未の瞳がこちらを向くのを待って、凛は続けた。
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