75: ◆tcMEv3/XvI[saga]
2014/05/25(日) 11:40:55.24 ID:d+YVnMr1o
#1#
永久に晴れる事なき曇天のもと、ゆったりと船は流れる。
死神は船を呑気な様子で漕ぎ、ちらと死者を見やる。
三途の河は、その者の業に応じて幅を変える性質を持つ。
この者の罪業はあまりにも深く……。
死神「こりゃ渡りきるのに5時間はかかるねぇ」
男「えっ。そんなにかかるんですか?」
死神「アタイからすれば、よくある距離なんだけど」
男「……すみません。私の恥ずべきところは、自身の業の深さを認めることのできない性質でして……」
死神「どうしたんだい?」
男「先程『そんなにかかるんですか?』と申し上げましたが、それは身の程を弁えていない発言で……」
死神「気にすることはないよ。さっき言った通り、よくある距離だから」
三途の川を含む黄泉の国全体は、時間の流れが現世と比べて『圧縮』されている。
現世の1秒が、黄泉の国の1年なのだ。
彼女は日本全土の死を担当している死神だ。
……前述の時の流れゆえに、彼女からすれば100年に約4人連れていけば済む計算となる。
彼女は死神だが死者をめったに運ばない。
三途の河の船頭をやらない日は、事務所で事務作業をしている。
閻魔が人を裁くのだが、その裁判1度のためには平均100枚の書類が必要となる。
それを全て彼女が用意する。
まず現世での行いをまとめた書類を閻魔に提出。
閻魔や他の職員のスケジュール調整などで、無駄に何枚も書類を書く。
裁判を受けた死者が天国に行くにせよ地獄に行くにせよ、相手方に『死者移送届』『裁判証明』『死者カルテ』などを送付しなければならない。
これでも仕事の一部にすぎない。
基本的に、黄泉の国の死者管理業務は、お役所仕事なのだ。
前述の時の流れゆえに、週休三日は確保されているのだが。
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