過去ログ - トール「フィアンマ、か。……タイプの美人だ」
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95: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2014/06/04(水) 22:52:11.36 ID:mifjCt1j0

「戻りまし、…………あ!」

鍵を開ける音の直後、少年が入ってきた。
なかなかに長身の少年だったが、顔はまだ幼い。
精々が十三歳程度だろうか。神父服に着られている。
少年はココアを飲むフィアンマを見るなり、買い物袋を取り落とした。
重い食材に目もくれず、彼はフィアンマに駆け寄ってくる。

「あの時は、ありがとうございました」
「…………?」

誰だろう、と首を傾げ。
甘いココアを飲みながら、フィアンマは暫く考え込んでみる。

『おかあさんがね、ここですわっていなさいって』
『それからどの位時間が経過しているんだ』
『……ふつか』
『…そうか』

『……多分、俺たちが思ってる通りなんだろうけどよ』
『本人が知るのは、もう少し先でも良いだろう。
 教会ならば、適当な言い訳を用意してくれる』
『お前、結構子供あやすの上手いんだな』
『職業柄、幼い子供に接する機会は何度もあったからな』

思い出す。
トールと共に、クリスマスの翌日に外へ出た日のこと。
座り込み泣きじゃくる、母親に捨てられた幼い子供。

「……あの時の」
「お礼を言おうと思って、ずっと捜してたんです。
 けど、見つからないし、姉さんは捜すなって言うし…」
「…ん? 姉が居るのか?」

ちら、とヴェントを見やると、バツが悪そうな顔がある。
なるほど、姉さんと呼ばせていたのだろう。
納得して、言葉の先を丁寧に促す。

「あの時一緒に居たお兄……いえ、何でもないです。
 ……あの日、貴方が俺を拾ってくれなかったら、死んでいたかもしれません。
 一緒に母さんを捜してくれたお陰で、ある意味踏ん切りもつきました」
「……そう、か」
「一緒に暮らすことになるケド、問題ない?」
「勿論ないで…あっ、ジェラート溶ける!?」

少年は慌てて引き返し、食材を保冷庫に入れ始める。
その様子が何だかおかしくて、微笑ましくて、ようやくフィアンマは笑みを浮かべた。
トールとの思い出全てがなくなった訳ではない。
証拠は指輪という形にも、この少年という形でも、確かに遺っている。


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