過去ログ - 飛鳥「そのキャラクターって、つくっているよね?」 菜々「ギクッ!?」
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14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/09(金) 01:02:20.70 ID:2t1okI1Q0

 事務所の扉を勢いよく開けて入ってきたのは、またもボクの先輩アイドルである阿部菜々さんだった。

 ボクよりも一回り小さな身長に、ウサギの耳に見立てられた大きなリボンが特徴的な十代の少女である。――と、いうのが彼女の見た目である。

 ボクの所属するプロダクションにおいて、彼女は一位二位を争う人気を誇っている、まさしくボク達新人アイドルの憧れとなるポストに君臨している。

 ちなみにボク自身も幾度となく顔を合わせているので、お互いにそれなりに気の知れた仲になっていた、菜々さんはとてもいい人で、年下であるボクにもすごく丁寧な言葉で話しかけてくれるし、しっかりボク達を助けてくれる、まさに頼れるお姉さんのような人である。……いや、むしろなぜだろうか、少しお母さんという表現のほうがしっくりくる気さえしてしまう。

 そんな素晴らしい人が目の前にいる、けれどボクはその状況で確かに表情を歪めていた。

(――あぁー、そういえば居たね……ボクの近くに、凄く近くにいたのをすっかり忘れていたよ)

「あれ? 今日は事務所に飛鳥ちゃん一人ですか? Pさんはともかく、ちひろさんが留守なのは珍しいですね」

「おはようございます菜々さん、ちひろさんはなんだか買い出しがあるらしくてね、こうしてボクが帰ってくるまでの留守番役なんだ」

「なるほどそうだったんですね! お疲れ様です飛鳥ちゃん、それじゃあ帰ってくるまで菜々も一緒にお留守番ですね」

「そうなるね……」

「あれ、どうして顔を背けるんです?」

「ソンナコトハナイサー」

 先ほどまで考えていたことがことであるだけに、なんだか申し訳ない気持ちでまともに顔を見ることができないでいると、心配そうにこちらを覗きこんできた。やめてくれ、凄く申し訳ない気持ちになってしまうじゃないか。

 なんだか気まずい――いや、良く考えてみれば、この状況はまたとないチャンスなのかもしれない。考えても見れば、つい先ほど結論を出したばかりではないか、過度な設定の盛り込みもまた一つの個性であり、かつ、それを自ら架しているという事は自覚ある偶像に他ならない、つまり意識的なキャラクターを扱っている目の前のアイドルならば――阿部菜々さんであれば、ボクの考えるアイドルのアリカタについてなにかを得ることができるのではないだろうか。

 …………いや、無理だろう。
 自称十七歳で、ウサミン星からやっきているラブリィメイドさんに、キミのそれは作っているキャラクターなんだろ? なんて、とてもじゃないが言えない。

 少なくとも、ボクには言えない。言えるわけない。

「――飛鳥ちゃん?」

「うわ! 菜々さん!? ちょっと顔近いよ、近い」

 目と鼻の先だった。きっと考え込んでいた隙に近ずかれてしまったのだろう、考え事をしていて周りが見えていなかったなんて恥ずかしい限りだ。

「もしかして、なにか悩み事ですか?」

「へ? い、いや、そりゃあ人間一つや二つは悩みは抱えているものだろう? だからボクだってないというわけでは――」

「やっぱり! そうだったんですね!」

「え、え……」

「アイドル、大変ですもんね……それが中学生の女の子が親元を離れて一人で頑張っているなんて、そりゃ悩みだってできちゃいますよね……でもまかせてください! 菜々はいつでも、女の子の味方ですよ! 人生の大先輩にどーんと話しちゃいましょう! 楽になりますよ、きっと!」

 あ、まずい、これはなにか盛大な勘違いをされている。というか大先輩って、確か菜々さん17歳って言ってたような……ボクは14歳なんだけれど。
 けれどある意味チャンスかもしれない、相手のほうから質問を促しているのだから、このタイミングでならば多少失礼な質問をしても許されるかもしれない。

「いや、え? でもほら、(キャラ付けについてなんて)言っていいのかな?」

「いいんですよ(辛いのに無理しなくて)、ほらドンと来なさい!」

 も、もう知ったことか! なんとでもなれ!

「え、えーっと、じゃあ……」

「はい、なんでしょう」



「菜々さんってそのキャラクターって、つくっているよね?」 



 瞬間、その場の空気と、菜々さんの表情が固まった。



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