過去ログ - 京太郎「操り人形よ、糸を切れ」
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/05/09(金) 12:50:41.59 ID:hFDQW4zg0
どこいらへんのメガテンだろう


3: ◆hSU3iHKACOC4[saga ]
2014/05/09(金) 12:51:38.40 ID:zyFBEZ370
五月中旬、地方新聞に小さな記事が出た。
 記事の内容は清澄高校に通う男子高校生がひき逃げにあい、意識不明の重傷を負った。清澄高校近くの商店街に向かう交差点で、倒れているのを通行人が発見して、病院に担ぎ込んだ。発見が早かったおかげで命をつなぐことができた。内容は大体このようなものだった。
 現場の状況から男子高校生を引いた車の運転手はまったくブレーキを踏んでいないことがわかった。ブレーキ跡がなかったのだ。


4: ◆hSU3iHKACOC4[saga ]
2014/05/09(金) 12:53:47.61 ID:zyFBEZ370
金属がひしゃげるような大きな音が商店街近くから聞こえていたこともあり、人がいないと思って突っ込んできた車に男子高校生が引かれてしまったのだと警察は予想を立てていた。犯人がどこへ消えたのかはわかっていない。
 男子高校生の意識が戻ったのは、事故から三日後である。まったく事故なんて起きたのかわからないという様子で、男子高校生は目を覚まし、自分の体に巻きついている包帯みて笑っていた。金髪に近い髪の毛をしていたのだが、事故のショックで色が抜けてねずみ色になってしまっていた。



5: ◆hSU3iHKACOC4[saga ]
2014/05/09(金) 12:55:59.34 ID:zyFBEZ370
男子高校生が目を覚ましたとき両親は涙を流して喜んでいた。医者が両親に語っていたのだ。
「もしかしたら二度と意識が戻らないかもしれない。体の傷というのは元に戻るけれども、脳に強い衝撃が与えられている可能性がある。そのときは覚悟をしてもらわなくてはならない」
と。言葉を濁してはいたものの、何がいいたいのかというのは両親にもわかっていた。だからこそ、男子高校生が目を覚ましたとき、何よりも両親は喜んだのだ。髪の毛の色が灰色へと変わったことなど、まったくどうでもいいことだった。
 両親は男子高校生に事故の話しをして聞かせた。事故の前後の記憶を息子が失っていたからだ。
 両親にこのように尋ねた。
以下略



6: ◆hSU3iHKACOC4[saga ]
2014/05/09(金) 12:57:44.53 ID:zyFBEZ370
両親はすべてを察した。両親はこれまでのことを話した。
 行方不明になった男子高校生を探しにいくといって電話をかけてきたこと。いつになっても帰ってこなかったこと。心配していると朝早く電話がかかってきて、そこで息子が事故にあったと知ったということ。病院で警察が両親のことを待っていて、そのときにノーブレーキで走ってきた車にはねられて、そのまま放置されたこと。本当ならばそこで終わっていたはずだが運がよかったのか、すぐに発見され、病院へと担ぎ込まれたということ。 
 男子高校生は神妙な表情を浮かべた。両親はそれをみて混乱しているのだろうと思った。意識失ったら、いきなり病院だったのだ。そしてひき逃げされたなどというのだから、混乱してもしょうがないことだと。


7: ◆hSU3iHKACOC4[saga ]
2014/05/09(金) 12:59:23.84 ID:zyFBEZ370
事故にあった男子高校生と同じくらいの年齢の男子高校生が二人病室に入ってきた。友人を探してくれと頼んだ生徒が一人。そして探し出した生徒が一人である。
 二人は涙を流しながら京太郎にお礼を言った。依頼をした生徒は
「自分が頼まなければ、こんなことにはならなかった。すまなかった」
といって涙を流していた。本当に申し訳がないという表情であった。思いつめて悲惨な結末を選びそうだった。男子高校生が探し当てた生徒は
「あなたが見つけてくれなかったら僕はきっと帰ってくることはできなかった。本当にありがとう。見ず知らずの僕のために、命をかけてくれる人がいるなんて思いもしなかった。何度お礼を言っていいのかわからない。本当に、ありがとう」
以下略



8: ◆hSU3iHKACOC4[saga ]
2014/05/09(金) 13:01:05.57 ID:zyFBEZ370
事故にあった男子高校生は
「そっか、大丈夫だったか。ならいいんだ。記憶が飛んでいて、最後にどうなったわからなかった。でも、元通りになったのなら満足だよ。俺は」
といって微笑んだ。
 両親は一人息子が少しだけ大人になったと思った。まだ小さな子供だと思っていたが、友人たちへの振る舞いの中に、何かを成し遂げた人間の厚みのようなものを見た。
 両親は何を成し遂げたのかを息子にたずねたりはしなかった。生きて帰ってきたこと、そして成長したこと、それだけあれば十分だったからだ。しかし無茶をしたことを少しだけ愚痴ることにはした。心配した人間がいたのだと伝えておかなければ、どこかに飛んでいきそうだったからである。


9: ◆hSU3iHKACOC4[saga ]
2014/05/09(金) 13:02:32.65 ID:zyFBEZ370
そうしていると病室に警察官と老人が入ってきた。警察官は両親よりも年上の男性である。男子高校生に、事故にあったときの状況を聞きたがったのだ。もう一人は警察官よりもさらに年上の男性。老人だった。身長が高く、不思議と頼れる雰囲気をまとっていた。若い時代は、さぞかしもてただろう。
 警察官はすぐに病室から出て行った。男子高校生が事故にあう前の記憶を失っていることがわかったからである。医者からもすでに説明を受けていたので、根掘り葉掘り聞くことはなかった。それに、老人からも話を聞いていたので、特に男子高校生から話を聞く必要がなかったのである。
 見知らぬ老人が、病室に入ってきたのは老人が男子高校生を助けてくれたからだ。両親が男子高校生に教えてくれた。
「この方が見つけてくれたから命を拾うことができたんだ」


10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/05/09(金) 13:03:06.22 ID:NvrJkDP+o
レス冒頭は一行空けて文章は適宜改行したほうが良い。
正直今のままだとだいぶ読みにくい。


11: ◆hSU3iHKACOC4[saga ]
2014/05/09(金) 13:04:10.64 ID:zyFBEZ370
早朝、散歩をしていると金属が引きちぎれるような音が聞こえ、音がしたほうへと向かうと男子高校生が交差点で倒れていたという。
 老人に対して頭を下げてお礼を言った。
「ありがとうございます。あなたが助けてくれなかったら、俺は生きていられなかった。友人も、あなたなのおかげでしょうか。もしそうなら、そのことについてもお礼をいいます」
 老人はうなずいた。
「察っしのとおりだ。交差点で君を見つけ、君が見つけた友人も私が助けた。よく、見つけられたね。感心するよ。そして最後まで、あきらめずに立ち向かった君の友人も」
以下略



12: ◆hSU3iHKACOC4[saga ]
2014/05/09(金) 13:05:54.95 ID:zyFBEZ370
老人は答えた。
「私の名前は葛葉ライドウ。隠居だよ。昔は探偵をやっていた。退院できたら私の友人に紹介したいとおもう。事故で傷ついた心を癒すことができる人物が知り合いにいるのだ。気晴らしを用意しよう。京太郎君さえよければの話だがね」
 京太郎は老人に答えた。
「もちろん、ありがとうございます」
 京太郎が退院したのは、それからさらに三日ほど後のことである。その間彼にお礼を言っていた男子高校生が二人、毎日彼の病室に通い、学校の話をしてくれていた。時々、病室から抜け出して中庭に出て、そこで野良猫と遊ぶ京太郎の姿が目撃されている。野良猫は真っ黒な猫で、印象的な緑の瞳をしていた。
以下略



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