7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/14(水) 19:34:03.80 ID:nm2l17/f0
事が起こったのは三月上旬のこと。
卒論も無事提出し受理されたことで大学の卒業が決まり、講義もほぼ消化試合と化した時期に、僕はまだ内定がなかった。
誤解のないよう一応言い訳だけはしておくと、決して就職活動をサボっていた訳ではない。
就職氷河期の風潮と、男に好かれない傾向のある僕の性質が重なって、内定が取れないのであった。
……ちょっと自分で言ってて悲しくなってきた。
勿論僕なりに危機感は感じていたし、就職浪人なんて羽川や戦場ヶ原に顔向け出来ないので、求人雑誌を片手に一息つこうとミスタードーナツに来ていたのである。
「吸血鬼も就職に困る時代……か、世知辛いな」
自虐的な皮肉を交え社会風刺を挿入してみたが、虚しいだけだった。
もちろんと言うべきか、隣には忍が座っている。
僕の苦難などいざ知らず、幸福満面の笑顔でドーナツを貪り食っている。
糖尿病になってしまえ。
「おい忍、聞いてるのか?」
「何じゃうるさいのう、儂がドーナツを食べておる時くらい静かにせんか」
「ドーナツと僕の就職事情、どっちが大事なんだよ」
「言うまでもないわ」
「だろうな……」
ああ、わかってましたよ。
わかっていましたとも。
少しでも僕を心配してくれていると思った僕が愚かでしたよ。
忍なら明日自分に隕石が落下するとわかっていようとドーナツを優先するだろう。
こいつはそういう奴だ。
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