61:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/08(火) 20:56:27.93 ID:HFfF56Bmo
……
あれからムロイには会っていない。
木材置き場には行くことがなくなったし昼間にも見かけていない。
もう会うこともないのではないかという気もする。
いつものように授業を受けながらケイはぼんやり思い出していた。
ムロイは自分の生き方をとことんまで突き詰めろと言った。
あの時は曖昧にしかわからなかったが今ならもう少しはっきりとした形でわかる気がする。
二つ前の席で窓の外を見ている少女ではなく星の魅力に憑りつかれた男でもないケイだけの生き方。
大勢と同じ感覚を共有することができずそれでも大勢を意識せざるを得ないふらふらとしたケイだけにしかわからないことがある。
迷う苦しさだ。
スズにはこれを理解することはおろか認識すらできないだろう。
ムロイだって似たようなものだ。
なぜ迷うのか、なぜ苦しいのか、それを気の済むまで問い続けることができるのはケイだけなのだ。
だから問い続ける。答えはきっと出ない。死ぬまでそうだろう。
答えの出ないことを確認するための生涯になるかもしれない。
だがそうしている限り後悔せずにもすむように思った。
頭の中にざりざりと異音が響く。
星の声が聞こえている。
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