過去ログ - エルフ「私の前に道はない 私の後ろに道は出来る」
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81:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/05/25(日) 04:15:58.24 ID:PvQ4dQQ90


そのとき少女は、会所から随分離れた場所にいた。

いい物を見つけたのか、買った魚を桶に入れて、倉庫の陰で手持ち無沙汰に佇んでいる。


エルフ「……はぁ〜」

彼女は目を閉じて、潮風の心地よさに浸っていた。

早く帰らないと魚の身が悪くなるな、それくらいのことしか考えていなかった。


そうしていると、やはりその金髪は目立つのか
相方が一目散に近寄ってくる気配がした。

随分と、リズミカルな足取りのように思えた。


男「………」

エルフ「…どうした?早いように思えるが、色良い返事はもらえたのか?」


男「…そう、だな…ああ」

エルフ「そうか、それは良かっ…た」


少女が目を向けると、彼女が一瞬たじろぐほどの熱い視線を男は送っていた。


エルフ「…ど、どうした?今にも泣きそうな顔して、私の顔に何かついてるのか?」

男「………」

エルフ「…あっ、ああこれは…鰯の安いのがあったから思わずな、今日の晩飯だ」


男は、膝を折って腰を下ろして、目線をようやく少女の高さに合わせた。

そして自身の無骨な両手、その小さな肩にそれぞれ置いた。

エルフ「…な、なんだよ」

男「お前は」


その手に力がはいると、幼い体は簡単にグイと引き寄せられた。

そして、周りからはほとんど見えないくらいに、その大きな背中の向こうに隠れてしまうのだった。


エルフ「ひゃいっ?!なんだ?急にいったい!お、お前さんは」

いきなりのことに文句の一つでも言ってやろうかと、相手の顔を見上げたら

目の前で男が、声を押し殺して泣いていた。

エルフ「え?」

そうして必死に何かを伝えようとしているのだが、嗚咽まじりで殆ど言葉になっていなかった。

男「……お前は、俺が会ってきたなかで…最高の、最高の…?ぐぅ」

エルフ「………なん、なんだ…もう」


好意を向けられていることは確かなので、彼女としても悪い気はしないのだが

その理由には、実のところ思い当たってはいなかったのだった。


男「……こんなとき、どう言葉で伝えればいいのか……俺には、分からんのだ」

エルフ「……はいはい、分かったから…ゆっくりでいいから、な」


その手も指も、男泣きが止むまで力が緩むことはなかった。



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